2024年9月に国連で行われた未来サミット。採択された「未来のための協定」はその名の通り、未来世代を強く意識するものでした。未来世代のために私たちができることは何か、筆者の経験を振り返りながら考察します。
「未来のための協定」で描くSDGs達成への道筋
持続可能な開発目標(SDGs)が2015年に採択されて、まもなく10年。達成期限である2030年までは5年強になりました。世界各地で起こる戦争や新型コロナウィルスの流行などを受けて、2015年からわずか10年で私たちを取り巻く環境は大きく変わりました。
停滞するSDGsの状況や国際社会の現況を再整理して、より具体的に取り組みを加速させる。多国間協力(グローバル課題に複数国が協力して取り組むこと)をより強化する。そうした目的のもと、2024年9月22日、23日の2日間にわたって、国連未来サミットが開かれました。
ここでは、「未来のための協定」という成果文書、そして「グローバル・デジタル・コンパクト」「将来世代に関する宣言」という付属文書が採択されています。文書を読んでいると、SDGsの達成度が芳しくないこと、国際的に重要視されている課題の解決には資金・人的資源などをしっかり投入することが鍵であることなど、さまざまなポイントが見えてくるのですが、中でも私が注目したのは、「将来世代」に関する記述です。
成果文書「未来のための協定」の中では、若い世代の多くが開発途上国に住んでいることを確認した上で、その人権の保護や教育・ビジネスの機会の確保、政治参画などの言及が多くあったのが印象的でした。「未来のための協定」という名前の通り、未来志向の文書になっています。付属文書として採択された「将来世代に関する宣言」も、まだ生まれていない、私たちが会うことのない先の世代に対して、現在のコミットを宣言しておくというもの。
持続可能な開発のための教育が変えたもの
話は少し飛びますが、私がSDGsに関心をもち、強く意識するようになったきっかけは、高校の授業です。総合学習の時間で、SDGsの各ゴールについて学んだうえで、グループワークをしました。テーマは、「近隣の空港の敷地に持続可能なまちをつくろう」。まちのゾーニングはどうするか、どのような建物を建てるか、資源エネルギーはどう調達するかなどのハード面だけでなく、教育・福祉などソフト面から各種の政策も検討しました。座学が多かった高校の授業で、自ら考え、学んだことをアッセンブリしながら、「持続可能性」について考えた経験は、私の中で「学び」の成果として鮮明に残っています。この経験がきっかけで、私は持続可能なまちづくりを学ぶことができる大学の学部に進学し、就職時もSDGsに積極的に取り組んでいることを条件のひとつに会社を選び、今こうして原稿を書いているわけです。高校の先生が読んだらきっと喜ぶと思います。
今から考えると、当時私が受けた総合学習はESD(持続可能な開発のための教育)でした。第5回「SDGsに関する意識調査」(2024年7月、株式会社WAVE実施)では、「SDGs」という言葉の認知度は全体で94.7%。言葉が広く知られるようになった今、その意義・目的を理解して行動に移すことの重要性が高まっていると言えます。職業別の内容理解度に注目すると、最も高いのは「中・高校生」で94.8%、次いで「大学生」(86.5%)、「会社役員・経営者」(83.3%)と続き、生徒・学生の間で特に内容理解が進んでいることがわかります。私自身が高校時代のESDに強く影響を受けているように、確かに教育が意識変革に寄与していると言えるでしょう。
先の未来サミットの話とつなげると、未来の社会を担う世代が何を考え、どう行動するかは、今の社会を担う世代の行動にかかっているのではないかと思うのです。それは、教育という直接的な手法だけでなく、個人としても、企業活動としても、将来世代に対してその指針をはっきりと見せることが、「誰ひとり取り残されない社会」実現に向けた道筋となる。正直、SDGsなんて聞き飽きた、流行りは過ぎた、そんな感覚があるように思います。でも、いま手を緩めるべきではない。同じことを続ける状況は「停滞」とも取れるかもしれませんが、大きな変革でなくとも「継続」がいま重視されるべきだと考えています。私が、こうして記事を書いて発信することも、何か、その一助になればと願います。