(引用;京都市情報館)
近年、気候変動による自然災害の甚大化が指摘されています。ゴール13「気候変動に具体的な対策を」でも掲げられているように、その対策にむけてさまざまな対策が講じられています。今回ご紹介したいのは「Eco-DRR」について。環境問題の解決のキーワードであるこの言葉の意味や、京都市で具体的に実施されている「雨庭」についてご紹介します。
減災・防災だけじゃない。教育や環境保全にもつながるEco-DRR
Eco-DRRとはEcosystem-based Disaster Risk Reductionという言葉の頭文字を取ったワードです。
自然の働き(生態系サービス)を活用して災害のリスクを減らし、地域の発展と自然環境の保全を両立させる取り組みや考え方のことです。たとえば、森林や湿地を整備すれば貯水効果を発揮して洪水や土砂崩れを防ぎ、自然現象に対する緩衝帯・緩衝材となってくれます。災害のリスクを減らしながら、生物多様性の維持にも貢献し、さらには自然学習の場やエコツーリズムの観点から地域社会に利益をもたらします。
Eco-DRRの取り組みは、基本的に「災害を未然に防ぐ」、「災害リスクの高い地域を避ける」、「災害の影響を和らげる」という3つのいずれかに該当します。
- 「災害を未然に防ぐ」:自然の力を利用して災害の原因となる状況を改善することです。例えば、田んぼが雨水を蓄えることで、川の水量が減り、洪水のリスクが低くなります。また、棚田や森林は水を保持する働きがあり、地すべりを防ぐ効果があります。
- 「災害の被害を受けやすい場所を避ける」:災害リスクの高い地域にある住宅地を、森林や草地、湿地などの自然環境に戻すことで、人々を危険な場所から遠ざける取り組みです。具体的には、リスクの高い場所には電気や道路といったインフラをわざと整備せず、住民がその場所に集まらないようにする方法も含まれます。
- 「災害の影響を軽減する」:自然の力を活用して、生活に必要なものを守ることを意味します。例えば、洪水に備えて水害防備林を整備したり、津波から守るために海岸防災林を作ったりすることで、家や町を守る取り組みが挙げられます。
古くから日本で活用された考えが、現代に輝く
日本国内のさまざまな地域がEco-DRRに取り組んでいます。
私の地元、京都では「雨庭」と呼ばれる仕組みがあります。これは、降った雨水を直接下水道に流すのではなく、一時的に貯めてからゆっくり地面に浸透させる植栽空間のことです。都市では、アスファルトなどで地面が覆われているため、降った雨はほとんど地面に吸収されずに排水されてしまいます。しかし、雨庭を作ることで、道路に雨水を溢れさせず、洪水を防ぐとともに、地下水を補充することで自然な水の循環を助けることができます。さらに、雨水を抑える効果に加えて、景観の改善や緑化、水質の浄化、都市のヒートアイランド現象を和らげるといったメリットも期待されています。

京都市では2017年から整備がすすめられています。ただ、雨庭の考え方は古くから日本に根付いていました。1392年に創建された相国寺の庭園は、美しい枯山水なのですが、雨が降ると一時的に貯水する機能があると分かっています。日本で古くから伝わる自然と共生する考えや工夫が、現代になって再注目されているのです。
京都市では市内の交差点12ヵ所に「雨庭」を整備。街中の何気ない風景にもEco-DRR、そしてSDGsの取り組みが行われています。皆さんも探してみてはいかがでしょうか。
【参考】
環境省ホームページ「Eco-DRR」
https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/eye/20230913.html
京都市情報館「雨庭」について
https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000291580.html