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「誰一“匹”取り残さない」──白血病キャリアの猫たちと暮らして

なるほど!

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我が家にやってきた、2匹の猫

仲良く並んで寝ています

近所の保護猫カフェに何度も通いながら、猫をお迎えする準備をしていた今年の春。3月末、ついに我が家に2匹の猫がやってきました。茶トラの長毛で堂々とした風格の「シンバ」と、サバ白の短毛でちょこまかと愛らしい「オサム」。どちらも1歳ほどのオスで、人懐っこい性格です。初めて動物を飼う我が家にとっては試行錯誤の毎日ですが、2匹の幸せそうな寝顔を見ると、日々の疲れも吹き飛びます。

でも実は、彼らには“ある事情”がありました。猫白血病ウイルス(FeLV)に感染しているのです。これは猫同士の接触などで感染するウイルスで、免疫機能を低下させ、白血病や貧血、腎臓病などの病気を引き起こす可能性があります。猫白血病ウイルスの有効な治療法はなく、感染した猫の寿命は診断されてから約3~4年と言われています。譲渡前にウイルス感染が発覚したため、飼育経験のない私は2匹をお迎えするべきかどうか悩みました。しかし、人間だけでなく、猫たちだって同じ命。「一度飼うと決めたのだから、責任をもって最期まで飼おう」——そんな思いで、シンバとオサムを家族に迎えることを決めたのです。

白血病キャリアの猫と「今日」を大切に生きる

段ボールが大好き。ふわふわのしっぽがチャームポイントです

我が家に猫が来て喜んでいたのも束の間、シンバの元気がないように見えました。念のため病院で検査を受けたところ、リンパ腫と重度の貧血——つまり、猫白血病ウイルスが発症していたのです。まだ1歳。あまりにも早すぎる現実に、言葉を失いました。でも、落ち込んでばかりはいられません。翌日からすぐに抗がん剤治療が始まり、投薬や輸血の助けもあって、今は元気な様子を見せてくれています。ご飯をたくさん食べて、オサムと追いかけっこをしている姿を見ると安心します。一度発症してしまうと長く生きることはできませんが、「今日」をできる限り楽しく、穏やかに過ごしてほしい——そう願いながら、私たちは毎日を大切に暮らしています。

ひなたぼっこをする様子

シンバとオサムのような短命の猫を増やさないために、猫白血病ウイルスに感染する猫が減っていくことを願います。保護猫をお迎えする場合は既に感染している可能性があるので、感染を広げないようにきちんとウイルス検査をする。ペットショップやブリーダーからお迎えする場合は、完全室内飼いを徹底してウイルスキャリアの猫との接触を避けたり、ワクチンを打ったりすることが大切です。こうした行動の積み重ねが、人と動物が安心して暮らせる社会、ひいては「住み続けられるまちづくり」にもつながるでしょう。小さな命を守り共に生きるために、一人ひとりの意識と行動が欠かせません。