「野良猫に名前をつけると情が湧いてしまう」――そんな話を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。ある対象に名前をつけることで、どこか他人事ではなくなり、自然と親しみや責任感が生まれるように感じます。
モノへの“名づけ”、実は身近な習慣かも?
この感覚は、なにも動物に限ったことではありません。幼いころ、ぬいぐるみや人形などに名前をつけて「自分だけの大切な存在」として扱っていた記憶がある方も多いのではないでしょうか。筆者もそのひとりです。また、筆者が学生時代に所属していた吹奏楽部では、楽器に名前をつけている部員が少なからずいました。「のぶ(クラリネット)の体調が悪い」などと、まるで相棒のように呼びながら接する姿が印象に残っています。単なる道具としてではなく、人格を持った存在のように扱うことで、自然と丁寧に向き合うようになる――それは、年齢を重ねた今も変わらない感覚です。

名前をつけると、扱い方が変わる
この“名づける習慣”は、筆者が大人になってからも続いています。たとえば、足つきの丸いフォルムが特徴のマグカップには「あしまる」という名前をつけています。複数のマグカップを持っているけれども、つい手が伸びるのはいつも「あしまる」。使用後はすぐに洗い、定期的に漂白するなど、他の食器よりも丁寧に扱っていることに気づきました。また、お気に入りのポーチには「ポチ」と名づけ、外出時には必ず持ち歩いています。名前をつけることで、ただの所有物ではなく、“ともに過ごす存在”として意識するようになったのかもしれません。


「名づけること」も、立派なSDGsアクション
ここで少し視点を変えてみましょう。
現代では、安価で手軽に製品を手に入れ、不要になればすぐに手放すという消費のサイクルが当たり前に。一方で、「SDGs(持続可能な開発目標)」や「サステイナブル」といった言葉が広く浸透し、環境や資源に対する意識も高まりつつあります。その中でも、Goal12「つくる責任 つかう責任」は、私たちの暮らしと密接に関わる目標です。モノを大切に使い、できるだけ長く活かし、廃棄を減らす。そんな日々の小さな意識こそが、持続可能な社会の実現につながります。
新しいものを次々と手に入れるのではなく、いま手元にあるものと、どう向き合うか。その最初の一歩として、「名づけ」は有効な方法ではないでしょうか。名前をつけることで愛着が生まれ、結果として一つひとつのアイテムをより丁寧に扱い、長く使うようになる。その小さな変化が、環境にもやさしい選択へとつながっていくのです。 もし、今あなたの身の回りにお気に入りのアイテムがあるなら、名前をつけてみてはいかがでしょうか。日常の中でモノとの距離が縮まり、暮らしにちょっとした彩りが加わるかもしれません。それは同時に、地球にとってもやさしい一歩となるはずです。