政府やNGO・NPOだけでなく、民間企業から教育機関まで多岐にわたる団体が活発に取り組むSDGs活動。最近は、胸元にSDGsバッジをつけたビジネスパーソンも街中でよく見かけます。実際にSDGsは一般の生活者にどれくらい浸透しているのでしょうか。
WAVE・SDGs研究室は2020年4月に東洋経済新報社と共同で、「SDGs意識調査」をオンライン上で実施しました。1000人を超えるアンケートモニターの回答から浮かび上がってきたSDGs普及の実態とは?本記事では、その認知率や関心度、SDGsを知ったきっかけなどを紹介します。
※本記事に掲載している内容は調査結果の抜粋です。調査結果全体はWAVE・SDGs研究室までお問い合わせください。
生活者のSDGs認知率は34.5%
全体におけるSDGsの認知率(「内容を認知している」と「名称を知っている」の合計)は、34.5%と3分の1を超えました。職業別では「公務員」(57.9%)、「大学生」(45.0%)、「中・高校生」(44.9%)の順で認知率が高いという結果に。公務員は「SDGs未来都市」(※1)などに関連した実務で、学生や教員はSDGsを扱う授業(ESD)(※2)により知ったと考えられます。
※1 SDGs未来都市…SDGsの理念に沿った取り組みを推進しようとする都市・地域の中から、持続可能な開発を実現するポテンシャルを持つ都市を選定し補助する制度。毎年30前後の都道府県・市町村が選定される。
(出典|内閣府地方創生推進事務局「地方創生SDGs・『環境未来都市』構想」)
※2 ESD…Education for Sustainable Developmentの略。環境、貧困、平和など現代社会の抱える課題を自分ごととして捉え、その解決につながる新たな価値観や行動を生み出していける持続可能な社会の担い手を育てる教育を指す。
(出典|文部科学省「持続可能な開発のための教育」)
若年層から高い関心が集まる
SDGsへの関心あり層(「関心がある」と「やや関心がある」の合計)は、全体で60.0%と半数を超えました。特に「大学生」(76.1%)、「中・高校生」(71.9%)は認知率と同様に関心も非常に高いことが判明しています。
意外な結果となったのが、「専業主婦(夫)」(63.5%)。認知率は20.6%にとどまりましたが、関心が高く、この層への認知拡大に向けたアプローチもSDGsの達成には重要だと言えるでしょう。
テレビがSDGsを知る1番のきっかけに
SDGsを知ったきっかけは「テレビ(番組やニュース)」(31.1%)、「テレビ(CM)」(24.1%)と、テレビ経由での認知が最多です。また、「職場や学校、地域活動など」(25.8%)が全体で2番目に高く、学生のSDGs認知率の高さを裏付ける結果となりました。
SDGsを認知するきっかけとしてテレビや新聞などのマスメディアの影響が非常に大きい一方、職場や学校、地域活動などオフラインのコミュニティやSNSなどのインターネットメディアも認知に一役買っており、さまざまな媒体を通してSDGsは生活者全体に広がっています。
「SDGsを知っていて当たり前」もそう遠くない?
本調査の結果で認知率が3分の1を超えるなど、ますます広まりつつあるSDGs。国連での採択から5年が経過し、2030年まで残り10年となる中で、認知が拡大していることは吉報と言えます。
しかし、裏を返せば3分の2はSDGsを認知していないのが現状です。今回の調査では「関心がある」~「やや関心がある」と回答者の60.0%が回答しました。この中にはSDGsを知らず、アンケートの中でSDGsの概要をはじめて知り、関心があると回答した人が多数含まれています。
このような「潜在的にSDGsに関心がある人々」がSDGsに取り組みやすいように、「SDGsとは何なのか」「一体どんなことをすればいよいのか?難しくないのか?」といった疑問を解消する情報の発信がゴール達成の第一歩と言えるでしょう。
私たちの今日の世界と私たちが望む未来は危険にさらされている。過去 4 年間の懸命な努力にもかかわらず、私たちは 2030 年までに「持続可能な開発目標」を達成する軌道にはのっていない。人と地球のための決定的な十年に突入するにあたって、私たちは劇的に実施のペースを上げていかなければならない。
アントニオ・グテーレス(国連事務総長)(出典|国際連合「持続可能な開発に関するグローバル・レポート2019」)
もちろん、ただ「知っている」だけでは意味がありません。私たち一人ひとりの生活者が目標達成に向けてアクションを起こしていくことが何よりも重要です。
次回以降のコラムでは、「SDGsに取り組むアクターに対する生活者のイメージ」や「SDGsアクションに対する生活者の意識」について紹介していきます。
SDGsに関する意識調査
- 調査対象:全国在住の15 歳以上の男女
- 調査主体:(株)東洋経済新報社、(株)WAVE (WAVE・SDGs研究室)
- 調査方法:インターネットによるアンケート調査
- 調査日:2020年4月
- 有効回答数:1,036サンプル
- 当調査結果のデータ、図表、本文等の著作権は株式会社 東洋経済新報社および株式会社WAVEに帰属します。当社の許諾を得ることなくこれらの全部または一部を複製、転載、翻案、配布、印刷、翻訳など、第三者の利用に供することを禁止します。