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意識と行動が地球環境を救う ―消費社会を生きる私たちが今日からできること

なるほど!

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地球温暖化やプラスチックごみの自然界への流出、生物多様性の損失など、世界はさまざまな環境問題を抱えています。対策に急を要する事態となった今、地球の資源を消費し生きる私たちはどのような行動をすべきなのでしょうか。経済成長が引き起こした諸問題と、その解決につながる循環型社会の構築や自給自足について考えます。

20世紀の経済的発展が招いた問題とは

私たちは、「大量生産・大量消費・大量廃棄型」の経済システムの中、便利で豊かな生活を享受してきました。安く大量に生産された製品が市場に出回り、使い終わるとごみとして廃棄される。不必要なものさえも積極的に売買される消費社会の構築によって、20世紀の世界は経済的発展を遂げました。

その一方で自然環境への負荷は次第に大きくなり、さまざまな問題が生じています。化石燃料の消費により、世界のCO2排出量は46年前の2倍以上に増加(2017年/1971年比)。
(出典|日本原子力文化財団 「原子力・エネルギー図面集【2-1-4】世界のCO₂排出量の推移」)
自然分解されないプラスチック製品は、海洋生物がエサと間違って食べて内臓に傷を負ってしまったり、プラスチックに含まれる有害な化学物質が食物連鎖によって人間の体内に取り込まれる可能性が生じたりと、甚大な影響が懸念されています。

こうした環境問題を改善するために、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済システムから脱却し、「循環型社会」へ舵を切らなければなりません。循環型社会とは、廃棄物の発生抑制と適正な再利用・処分によって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷をできる限り低減する社会のこと。日本では、循環型社会形成推進基本法の下、技術やシステムの強化が図られています。

循環型社会の基盤にあるのは、3R=「Reduce(減らす)」「Reuse(繰り返し使う)」「Recycle(再資源化する)」の考え方です。生産・消費・廃棄の各段階で、ごみをつくらない、不用品を再利用する、使い終わったものは再資源化するという行動を徹底し、新たな資源の投入や自然環境に戻す排出物の量を最小限にすることを目指します。

この3R、生産や廃棄物処理を担う企業・自治体はもちろん、消費者である私たちも常に意識し行動しなければならないもの。「個人レベルの取り組みが環境問題の改善につながるのか?」と思われるかもしれませんが、私たちは日々無意識のうちに電力を消費し、不要なものをごみとして捨て続けています。一人ひとりが自分の消費行動を見直し、小さな取り組みを継続することが環境保全につながるのです。

誤ったエコ意識は、かえって環境負荷になる

最近はエコへの意識の高まりから、環境に配慮した行動をしている人も少なくありません。しかし、間違った認識や中途半端な取り組み方では逆効果になることも。

たとえば、ショッピングに使うコットン製のマイバッグを、ノベルティなどでいくつももらったり、汚れたからとすぐに買い替えたりしていませんか。バッグの種類によってはプラスチック製のレジ袋よりも生産時に消費する環境資源が多く、数回使用しただけではかえって環境によくない場合があります。Reduceの観点からもむやみに買い替えをせず、1つを長く大切に使う姿勢が重要です。

また、ごみを出すときに分別せずに捨てたり、容器やボトルを洗わないまま出したりしていませんか。分別されていないとリサイクルできないのはもちろん、汚れが残っていても資源として再利用することができません。付着物をしっかり洗い流し、各市町村で決められたルールに従って処分するようにしましょう。

食とエネルギーの生産と消費を地域でまかなう「自給自足」

循環型社会を推進する中で、より持続可能な社会に近づくための方策として考えたいのが「自給自足」です。必要なエネルギーや食料などを自分たちでまかなう自給自足の暮らしは、エネルギー消費や食品ロス、ごみの削減などが期待できる、環境に優しいライフスタイルと言えるでしょう。個人で本格的に導入するのは簡単ではありませんが、地域単位で考えれば、多様な取り組みによって自給自足が可能になります。

地元の産品を積極的に購入する地産地消は、地域単位での自給自足だと言えます。農水産物の輸送にかかるエネルギー=「フード・マイレージ」を抑制して省エネルギーを実現できるほか、家庭で出た生ごみを回収して堆肥化し、ごみの削減に一役買っているケースもあります。

また、都会の限られたスペースで効率よく農産物を生産する「都市型農業」が少しずつ広がり、食料自給率の向上や都市環境の改善に結びつく可能性を秘めています。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)の各事務局長が国際市場で食料不足が起こりかねないと指摘する中、そうした事態や、今後起こりうる人口増加による慢性的な食糧危機への備えにもなります。

食と同様、日本のエネルギー自給率は諸外国と比較して低水準で、約90%を輸入に頼っている現状です。
(出典|日本原子力文化財団 「原子力・エネルギー図面集【1-1-11】 主要国のエネルギー輸入依存度」)
しかし、自治体単位で見ると一概には言えません。地域内のエネルギー需要を上回る再生可能エネルギーを生産している自治体は、全国で119にのぼっています(2018年度)。
(出典|千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所「永続地帯2019年度版報告書」)
地方を中心に、太陽光をはじめ風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電システムの導入が進んでおり、エネルギーの自給自足も決して夢ではないことが分かります。

日本では、環境基本法に基づき法整備が進められるなど、これまでも環境問題に対応した仕組みづくりが行われてきました。にもかかわらず、CO2排出量は一向に減少せず、世界の潮流に乗り遅れている現状にあります。その原因は、私たち一人ひとりの行動が地球に多大な影響を及ぼすことを自覚できていないからではないでしょうか。今のペースで地球温暖化が進んだ場合、現在30億人が暮らす場所が、50年後には暑すぎて人の住めない環境になるかもしれないという研究結果も発表されています。今こそ、すぐに実践できる環境保全活動に取り組みながら、環境問題と真剣に向き合う時。何気なく行っていた消費行動を見つめ直し、従来の経済システムからの転換を図る一歩を踏み出しましょう。