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Let’s Celebrate Diversity! 多様性の飽くなき追求。 共鳴するSDGsとセサミストリート

持続可能な発展の実現に向けて鍵となる「多様性」

 政治家やビジネスマン、芸能人の胸元に輝くカラーホイールバッジ、テレビCMやイベントのポスター。「SDGs」という言葉やマークをさまざまな場面で目にするようになったのはここ数年のことだ。従来の国際的なアジェンダと異なり、社会に広く浸透している理由は「誰一人取り残さない」姿勢にある。特定の国や人々の問題というミクロな視点ではなく、全員参加型のムーブメントとして取り組みが進んでいる。世界中の人々が手を取りあい、目標を達成するには「多様性への寛容」が欠かせない。SDG5「ジェンダー平等を実現しよう」やSDG17「パートナーシップで目標を達成しよう」とあるように、違いを受け入れることができる社会の実現が持続可能な発展には求められている。SDGsが重視する多様性の重要さを、1969年の放映開始以来50年にわたり子どもたちに伝え続けてきたテレビ番組が「セサミストリート」だ。

すべての子どもたちの中にすばらしいものを見つけよう

 セサミストリートの活動の核は“See Amazing in All Children(すべての子どもたちの中にすばらしいものを見つけよう)”という考え方にある。セサミストリートには、その時代に社会が抱える問題を象徴するキャラクターが必ず登場する。近年では依存症に苦しむ母親を持つカーリや自閉症のジュリアなどが仲間に加わっている。辛い背景を持つ者もいるが、彼らは決して後ろ向きにはならない。セサミストリートの仲間たちは違いを肯定的に捉え、一人ひとりのすばらしい部分を見つけていくのだ。そこには異なる個性が交わり、生まれる新たな価値がよりよい世界を創るという信念が貫かれている。キャラクターが皆まったく異なる容姿・色なのは、違いを視覚的にもわかりやすく伝えたいという思いが反映されているからだ。

難民の子どもたちにも教育を。中東版プログラムの開始

 セサミストリートはすべての子どもに質の高い教育を提供すべく、2020年2月から新たな試みをスタートさせた。中東地域におけるプログラムの開始だ。難民の子ども向けにローカライズされたテレビ番組を中心に、テレビのない家庭にも届くよう紙の教材や対面でのケアプログラムを提供している。ここでは難民のジャッドが新たに仲間に加わる。ジャッドがセサミストリートの仲間たちに受け入れられる様子に、子どもたちは自らを投影し、安心感を得る。教育機会の喪失が深刻な難民の子どもたちに向けて、読み書き計算などの基礎教育と共に、心のケアとなる内容も盛り込まれている。

自由な発想と多様性に触れる喜びを伝えるセサミストリートカリキュラム

 日本でもセサミストリートカリキュラムという新たな挑戦が始まっている。学校とタッグを組んで授業に導入し、日常に入り込むことで子どもたちの意識や行動を変化させるのが目標だ。小学校6年間での合計72プログラムの履修を通して、自由な発想力や協調性などの「非認知能力」を育成する。個性豊かなキャラクターたちは強みの1つ。授業はセサミストリートのキャラクターが暮らす世界を舞台に展開される。そこは現実社会と同じ問題に直面しており、子どもたちはキャラクターと自分を重ねながら、解決策を探る。ここに本カリキュラムの特徴がある。子どもたちが考えを巡らせる世界には、制限も正解もない。制限がないからこそ、自由に考え、意見を発信し、議論をすることができる。そのような学びを通して、答えのない問いについて考える楽しさや、自分とは違う考え方に触れる喜びを体感するのだ。実際にカリキュラムを導入した埼玉県戸田市では、ディスカッションの活発化や発想力の柔軟さの向上が調査結果として報告されている。今後は日本各地へとコラボレーションを広げるとともに、学校だけでなく家庭とのつながりも模索していくという。

SDGsと共鳴する信念。“Celebrate Diversity”

 常に社会の変化を見据え、その時代の子どもたちが必要とする学びを提供してきたセサミストリート。変わらないのは、多様性への寛容を世界へと広げ、すべての子どもたちが夢を信じ、行動できる社会を実現するという理念だ。これはまさしく、SDGsが目指す持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現と共鳴する。教育を通して、子どもたちと共によりよい未来を創造するセサミストリートの挑戦はこれからも続く。

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掲載紙

今回の記事は、東洋経済新報社と株式会社WAVE/WAVE・SDGs研究室が制作した「東洋経済ACADEMIC SDGsに取り組む小・中・高校特集」に掲載されています。

東洋経済ACADEMIC SDGsに取り組む小・中・高校特集 初等・中等教育におけるSDGs・ESDの実践

SDGsが国連サミットで採択されて5年が経過した今、国や企業だけでなく一般消費者にもその動きは広まっている。そんな中、2030年のSDGsの目標達成に向けて教育の果たす役割が認知され始めている。日本では2020年に本格始動を迎える新学習指導要領にもSDGs、そしてESDの必要性が明記され、特徴をいかした独自の取り組みが日本各地の学校で実行され始めている。SDGs達成に向けたムーブメントに、新たに加わった初等・中等教育の今に迫る。