SDGsゼミリポート | サステイナブルな未来を多様な視点で探求する

トップ > 研究員コラム > 人類の時代「人新世」で地球史上6度目の大量絶滅期が訪れる?

人類の時代「人新世」で地球史上6度目の大量絶滅期が訪れる?

度を超した経済活動や開発行為によって進む環境破壊。現在、人類が地球に深刻な影響を及ぼすようになった地質学上の時代を、「人新世(Anthropocene)」と位置付ける動きが高まっています。人新世とは、いったいどのような時代なのでしょうか。

「完新世」に続く新たな地質時代として提唱

地球誕生から今日に至るまでの歴史を、岩石層に残された生物の化石などを基に区分したのが地質時代です。大区分として「累代」があり、そこから「代」、「紀」、「世」に分かれていきます。生動物が出現した「先カンブリア時代」、三葉虫や魚類が爆発的に増加した「古生代」、恐竜が栄華を極めた「中生代」。そして、巨大隕石の落下で、多数の生物が絶滅した6600万年前に「新生代」が始まりました。新生代の「第四紀」のうち、最終氷期が終わった1万1700年前から続く地質時代を「完新世」と呼びます。この地球史上でも例外的に温暖で安定した環境の中、人類は世界各地に広がりながら文明を発展させてきたのです。

万物の霊長といわれるほど繁栄した人類ですが、第2次世界大戦を機に大量生産や核兵器の開発・実験が本格化。さらに、人口爆発なども進行する過程で、気候変動や熱帯林の減少、生物多様性の喪失、海洋汚染といった環境破壊が深刻化していきました。今や人間活動が地球に及ぼす影響は、かつてと比較できないほど甚大なものになっています。 人類が有する過度の影響力を踏まえ、完新世に続く新たな地質時代として位置付けられようとしているのが「人新世」です。この言葉は、オゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞したオランダ人化学者、パウル・クルッツェン氏によって提唱されました。人新世は、地質学の国際的学術団体である国際地質科学連合に認められた正式な区分ではまだありません。地質時代としての評価を確立するには、岩石層に刻まれた完新世との境界線を特定し、証拠を積み重ねる必要があります。しかし、正式な認定とは別に、その概念に対する理解は広がりつつあり、人類の行いを省みる契機として大きな注目を集めているのです。

人工物の総重量が生物の総重量を上回る

イスラエルの研究機関は、人新世の到来を象徴する衝撃的な推計を学術誌『ネイチャー』で発表しています。2020年内で地球上にあるコンクリートや金属、プラスチックといった人工物の総重量が、生物の総重量を上回った可能性があるというのです。20世紀初頭には、生物の3%に満たなかった人工物の総重量は指数関数的に増加し、1兆トンを超えました。さらに、20年後には現在の約2倍になるというから驚きを隠せません。

これまで地球上の生命は、気候変動や火山の噴火、氷河期、隕石の落下などによって、5度の大量絶滅を経験してきました。そして、次の6度目は、度を超した経済活動や開発行為が原因で引き起こされるといわれています。人類があらゆる生物の命運を握っているといっても過言ではなく、私たちは今まさに重大な岐路に立っているのです。 1992年に初めて開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」など、以前から地球環境の改善に向けた国際的な潮流は生まれてきましたが、国家間の取り決めだけでは根本的な解決に至りませんでした。地球サミット以降も、温暖化が進行し、生物の多様性は失われ続けています。国だけではなく、産業界からアカデミア、市民までもが一体となって動かなければ、持続可能な社会はもはや実現できません。抜本的な方向転換と新たなフレームワークが求められる中で登場したのがSDGsです。SDGsには17のゴールがありますが、それぞれが切り離されているわけではなく、すべては密接につながっています。経済の持続的な発展も包摂的な社会の実現も、安定した地球という土台がないことには成り立ちません。一人ひとりが「人新世」という現実を直視し、この有限の世界を守るためにどれだけ行動できるのか。私たちが一丸となって取り組まない限り、明るい未来は決して訪れないでしょう。

<参考>

「地球に人類が爪痕残す…『人新世』はどんな時代?」(讀賣新聞オンライン)

「6度目の大絶滅。人類は生き延びられるか?」(NATIONAL GEOGRAPHIC)