SDGsゼミリポート | サステイナブルな未来を多様な視点で探求する

SDGsゼミリポート | サステイナブルな未来を多様な視点で探求する

WAVELTD
トップ > 社会調査 > 【企業調査】「行動の10年」スタート。SDGs達成に向けた企業の変化と課題

【企業調査】「行動の10年」スタート。SDGs達成に向けた企業の変化と課題

なるほど!

4

国連は2030年までの10年間をSDGs達成のための「行動の10年(Decade of Action)」と位置づけ、日本においても国や地域、企業、市民とあらゆるステークホルダーによる取り組みの加速が期待されています。今回、帝国データバンクが実施した「SDGsに対する近畿地区の企業の見解」に関する調査結果をもとに、近畿地区の企業におけるSDGsへの意識や取り組みの現状についてご紹介します。

出典:帝国データバンク「SDGsに対する近畿地区の企業の見解」 ※調査期間:2021年6月17日~30日、調査対象:近畿3,877社(有効回答企業数:1,824社(回答率47.0%))

SDGsの認知度向上と取り組みに積極的な企業が大幅増加

自社におけるSDGsへの理解と取り組みに対する回答では、「言葉も知らない」が2.2%(前年調査13.1%)、「分からない」が6.3%(前年調査11.8%)と認知度が大きく向上しています。また、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」もしくは「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」と回答した『SDGsに積極的』な企業は40.5%で前年から13.1pt増加。企業のSDGsに対する意識は高まっており、取り組みも活発化していることがわかりました。一方で、「言葉を知っていて意味もしくは重要性を理解できるが取り組んでいない」と回答した企業は全体の41.1%と最も多く、「言葉は知っているが、意味もしくは重要性が理解できない」と合わせると、『SDGsに取り組んでいない』企業は全体の51.0%を占めます。認知度が高まる一方で、SDGsへの取り組みについては2極化している現状が明らかになりました。

企業規模別に見ると、SDGsに積極的な企業は大企業で58.2%を占める一方で、中小企業では37.8%、小規模企業では31.3%と規模ごとに差が開く結果となりました。また、業界別では「製造」が46.4%と最も高く、前年調査からの増加幅は「不動産」(38.6%、前年調査比21.1pt増)が最大となったようです。また、前年調査では「製造」以外は積極的な企業が20%前後にとどまっていたところ、今回の調査では30%台後半から40%代後半となっており、全業界の傾向としてSDGsに積極的な企業が増えていることがわかります。

他方、SDGsに取り組んでいない企業からは「抽象的な題目のみで、具体的な行動が不明」(浄化槽清掃・保守点検、小規模企業、大阪府)や「外国企業に問題があり、日本企業は巻き込まれているという印象」(運動用具製造、中小企業、滋賀県)といったSDGsに懐疑的な意見が中小企業を中心に見られ、「零細企業にとっては、そんなところに割く予算はない。現状生き残ることがすべて」(各種機械・同部分品製造修理、小規模企業、兵庫県)といった資金面で苦慮する声も複数寄せられました。

身近な取り組みが進む一方で、国際的課題に対するアプローチは不十分

SDGs17の目標のなかで現在取り組んでいる項目に対する回答では、目標8「働きがいも経済成長も」が31.5%と最も多い結果となりました。前年からの増加幅を見ると「作る責任 つかう責任」(6.0pt増)がトップで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(5.8pt増)、「ジェンダー平等を実現しよう」(4.0pt増)と続きます。働き方改革や環境問題といった企業にとって身近なテーマの取り組みが増加しています。

一方で、「貧困をなくそう」(6.7%)や「飢餓をゼロに」(4.3%)といった項目は下位に位置しており、日本では実感しづらい国際的な課題への取り組みが少ないことがわかります。さらに「分からない」という回答が32.5%と全体で最も多く、自社の取り組みがどのような意味を持ち、SDGsのどの目標の達成につながっているのか理解できていない企業が多いことも明らかになりました。

具体的な行動へどう移していくのか、中小企業を中心に苦慮の声

SDGs17の目標の中で今後最も取り組みたい項目に対する回答では「働きがいも経済成長も」(15.8%)がトップでした。増加幅では「つくる責任 つかう責任」(2.7pt増)、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(2.5pt増)、「働きがいも経済成長も」(1.8pt増)と続いています。ここでも「分からない」(24.0%)が最も多く、SDGsの認知度が向上する一方で、具体的にどのような行動に移せばよいかわからないという企業が多い事実が浮かび上がっています。企業からは「現時点でSDGsに取り組む企業は大企業が多く、弊社では働き方改革で精いっぱい」(室内装飾繊維品卸、中小企業、京都府)や「考える暇もない。社員もよく分かっていない人が多く、他人事のように思っている」(一般機械器具卸、中小企業、大阪府)といった意見もあるようです。

「行動の10年」を迎え、世間ではSDGs推進に向けた動きが活発化しています。今回の調査でも、SDGsに対して積極的な企業が大きく増加している一方で、SDGsに取り組めていない企業やSDGsに取り組めているかわからない企業も多く見られるという課題も見えてきました。

SDGsへの取り組みは今、企業価値を左右するファクターとなりつつあります。今後は官民が一体となって企業のSDGs推進をより活性化させることにより、規模や業種を問わず、企業のSDGsへの取り組みが広がっていくことを期待したいところです。