SDGsゼミリポート | サステイナブルな未来を多様な視点で探求する

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人も地球も美しくする、サステイナブルなコスメ

SDGsの考え方が普及した現代社会において、美容業界にもサステイナブルの波が到来しています。洗顔料やボディーソープなどのスキンケア、ボディケア商品を含めると、化粧品は多くの人が日常的に使用しているアイテム。商品選びの際に、一人ひとりがサステイナブルに関する意識を持つだけでも、大きな影響が期待できます。持続可能性に配慮しているかどうかも、判断基準のひとつにしてみてはいかがでしょうか。

2022年、美のトレンドは「サステイナブル」へ

SDGsの達成目標時期まで10年を切り、「SDGs」「サステイナブル」といった言葉が幅広い業界において登場している現在。美容業界でもサステイナブルがトレンドとして取り上げられています。

例えば、美容雑誌『MAQUIA』(集英社)2021年11月号では、Z世代モデルのサステイナブル活動をピックアップ。社会問題やSDGsに関して積極的に発信する長谷川ミラさんの生活を通して、気負いすぎず、等身大で行えるアイデアを紹介しています。また『VOCE』(講談社)2022年3月号では、サステイナブルを2022年の美容トレンドとして紹介。エコなパッケージデザインや環境に配慮した処方などが当たり前になる、サステイナブル元年の到来を予想しています。

美容雑誌の購読者は、流行や時代の移り変わりに対する感度が高い傾向にあります。こうした記事が大きく取り上げられるのは、消費者が自らのメリットだけでなく、自然や社会への影響を重視する時代を象徴する事象だと言えそうです。

肌にも動物にも優しいヴィーガンコスメが流行

自然由来の成分が豊富なヴィーガンコスメ。2021年の韓国での流行をきっかけに、日本でも人気を博しています。ヴィーガンというと、肉や魚に加え、卵や乳製品、はちみつも食べない、完全菜食主義者をイメージされる方が多いかもしれません。本来の意味は、食事以外でも一貫して動物由来のものを避ける考え方のことです。

ヴィーガンコスメの定義は、動物由来の原材料を一切使用せず、動物実験を行わずに作られていること。韓国発祥のヴィーガンスキンケアブランドBEIGIC(ベージック)では、製品すべてにコーヒー豆由来の成分を使用しています。これは、Goal15「陸の豊かさも守ろう」と深く結びついた取り組みです。さらに、成分として配合されている植物はすべてフェアトレード認証を受けたもの。Goal8「働きがいも経済成長も」、Goal10「人や国の不平等をなくそう」の観点から見ても有用だといえます。

「ヴィーガン」の名はついているものの、ヴィーガンコスメを使用している層は、完全菜食主義者だけではありません。低刺激処方の商品が多いため、敏感肌の消費者を中心に支持されています。さらに、天然の植物由来の繊細な香りなど、ヴィーガンコスメならではの良さに惹かれて商品を愛用する消費者も。名前にとらわれず気軽に試してみると、自分に合ったヴィーガンコスメに出会えるかもしれません。

BEIGIC ルーセントオイル
化粧水で整えた肌に使用する顔用オイル。高品質のコーヒー豆から抽出したグリーンコーヒービーンオイルに、アルガン、ローズヒップなどの天然成分を加えて精製されています。合成香料や合成着色料、シリコン、パラベンを一切使用しない低刺激処方で、敏感肌の消費者を中心に支持されています。

化粧品の陰で広がる環境破壊

なぜ今、美容業界でサステイナブルブームが起こっているのでしょうか。消費者の意識の向上など、数々の要因が考えられますが、化粧品による環境への悪影響の大きさが指摘されていることも一因です。時には身だしなみやマナーとして、時には自分を元気づけてくれるアイテムとして、わたしたちの生活に欠かせない化粧品。ですが、その陰で起こっているさまざまな問題についてはご存知でしょうか。

例えば、パーム油による間接的な森林破壊が挙げられます。熱帯産のアブラヤシの実から採取されるパーム油は、世界で最も多く使われる植物油です。全生産量の約8割は食品に利用されますが、食器洗い・洗濯・掃除用の洗剤やシャンプー、化粧品にも多く使われ、石けんには主成分として含まれます。このパーム油の需要の増加にともなって、熱帯の森が次々とアブラヤシ農園に変えられてきました。マレーシアでは1990年から2010年のわずか20年間で、日本の九州の面積に相当する約350万haもの熱帯雨林が破壊されています。また、日焼け止めに配合されている成分とサンゴの白化との関連も問題視されており、2021年1月1日よりハワイでは日焼け止め禁止法案が実施されるなど、世界的に対策が講じられています。

各国の化粧品メーカーもこれらの問題を重要視し、環境への影響に配慮する製品開発を推し進めています。例えば、2012年に設立され、“包装紙まで完璧なサステイナブル製品”を世界で初めて開発したニュージーランド発のブランド、ethique(エティーク)。製品はすべてパーム油不使用。製品にパーム油やその派生物が一切含まれないことを証明する「オランウータン・アライアンス」の認証も受けています。また、ジーエルイー合同会社から発売されている「サンゴに優しい日焼け止め」は、日焼け止め成分の規定があるビーチでも使用可能。紫外線吸収剤はもちろん、香料、鉱物油、防腐剤、ナノ成分、合成界面活性剤すべて不使用の製品です。

※熱帯地方ではパーム油の生産のために森林破壊が進む(イメージ)

ポリシーに共感できるブランド選び

美容業界におけるサステイナブルは、健康・美容志向の高まりだけでなく、環境破壊に対する危機感からも注目されています。私たち消費者側にも、どの商品を選ぶことがサステイナブルな行動につながるのかという視点が求められます。

例えば、環境に配慮した素材を用いたパッケージの商品や、詰め替え用の商品を選ぶことで、ゴミ削減に貢献できます。“樹木との共生”をテーマに掲げるスキン&マインドケアブランドBAUM(バウム)は、木の端材を商品パッケージに使用。中身を使い切ると中心部のボトルを新しいものに交換できます。高額な化粧品ブランドの中には、ラグジュアリー感の演出を重視した結果、過剰包装や、必要以上に華美なデザインを選択している商品も多くあります。これに対してBAUMのパッケージデザインは、高級感や洗練性と環境への配慮が両立されている点が消費者の共感を呼んでいます。

また、自然派の商品を扱う日本の化粧品ブランドTHREE(スリー)では、オーガニックコスメの世界基準である有機認証「COSMOS」取得のベーシックケア、バランシングシリーズが人気ラインナップのひとつ。このシリーズの看板商品、クレンジングオイルについて、詰め替え商品が数量限定で発売され、美容業界で話題となりました。人気のあるアイテムがピックアップされた背景から、中身の良さを知る顧客に長く愛用してもらいたいという思いが読み取れます。

同ブランドは、2025年までにスキンケア・ボディケア全商品において「COSMOS」の取得を目指しています。「COSMOS」認証のためには、原料の栽培法や、環境に配慮した製造工程、包装資材に関して厳しい基準が定められており、これら全てをクリアすることが必要です。創業時から国産原料を積極的に取り入れて独自成分を開発しているTHREEにとって、認証は、原料を生産する畑の安全性、透明性を担保するもの。Goal9「産業と技術革新の基盤をつくろう」やGoal15「陸の豊かさを守ろう」にも関連した取り組みに、注目が集まっています。

開発背景や原材料調達、製造方法などを知ったうえで商品を選ぶことは、私たち消費者が実行できる取り組みのひとつ。動物実験の禁止、フェアトレードの支援など、さまざまなブランドがサステイナブルに対する考え方をポリシーとして掲げています。SDGs17の目標のうち、あなたが特に興味を持っているものがあるなら、関連の深い取り組みを行っているブランドの商品を選ぶのも良いかもしれません。

BAUM ハイドロ エッセンスローション
木製パーツには継ぎ目や天然木ならではの節や色むらがありますが、どれも、世界にひとつの個性。木で作られたものに触れ、樹木の香りに満たされることでリラックス効果が期待できます。また、自然環境への配慮として、一部プラスチック容器にはバイオPETを、ガラス容器にはリサイクルガラスを採用しています。
THREE バランシング クレンジング オイル R リフィル
原材料100%天然由来、原材料12%有機栽培の、植物の恵みを凝縮したクレンジング。シンプルな詰め替えパッケージデザインによってブランドの世界観を保ちながら、環境への負荷を削減。その考え方が消費者の共感を呼びました。

地球と自分自身のために、最後の一滴まで使い切ろう

サステイナブルな商品を購入しても、使い切らずに捨ててしまっては元も子もありません。消費者としては無駄なく最後まで使うことを心掛けたいところ。余計なゴミを出さないよう意識することが、Goal12「つくる責任 つかう責任」やGoal14「海の豊かさを守ろう」、Goal15「陸の豊かさも守ろう」の達成につながります。

メーカーとしても「使い切る」ことを推進する仕組みを設けるなど工夫をしています。例えば、容器のリサイクルを積極的に推し進めているブランドも。自然素材を活用したハンドメイド化粧品、バス用品メーカーを扱うLUSH(ラッシュ)で実施されている「BRING IT BACK」。使い終わった容器を店舗に返却すると、1個につき30円分をお買い物の際に利用できます。また、対象容器5つでフェイスマスク1つと交換することもできるため、「せっかくなら容器を取っておいて、まとめて持って行こう」と思わせられる、うまい取り組みです。返却された容器は新たな商品の容器として生まれ変わります。消費者はちょっとしたお得感を味わいながら、手軽にリサイクルを実践できます。

低価格帯から高級感のある化粧品ブランドまで、サステイナブルの動きが強まっている昨今。地球にやさしい商品の中からあなたに合ったものを選び、丁寧に使い切ることで、持続可能性について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

※イメージ

<参考>