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【園田学園女子大学】「今、地域社会のために高校生の私たちにできることは何か。」可能性を広げる高大連携プロジェクト始動

兵庫県尼崎市にある園田学園女子大学は、「凛としてしなやかに、地域とともに、社会をきりひらく女性の育成」という大学の理念の下、教育・研究を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。今回ご紹介するのは、園田学園女子大学が独自に実施している高大連携プロジェクト。SDGsとのつながりや、具体的なプログラムの内容についてお伝えします。

高大連携プロジェクト「SASプログラム」とは

「SAS(SONODA Action for the Sustainable Program)プログラム」とは、園田学園女子大学が今年から開始した高大連携プロジェクトです。SDGsを通して、高校生が卒業後の進路及びその先のビジョンについて考える機会を大学が提供。座学ではなく、経験・実感することを重視した、企画参加型の授業が展開されます。具体的には「医療・健康」「保健・体育」「保育・教育」「ビジネス」「ライフスタイル」という5つのテーマで、SDGsを通して自分たちが暮らす地域が抱える課題について考えます。この5つの視点は園田学園女子大学の学科と連動しており、これから進路選択をする高校生に向けて、大学での学びとSDGsのつながりを紹介する役目を果たしています。各学科の分野を説明するだけでなく、修得する専門的な知識やスキルを活かして、どのような形で社会貢献できるかを考える機会になっているのです。

一年間を通して行われる本プログラムは、大きく3つのステージに分かれています。1stステージでは5つの視点からSDGsについて学び、幅広い知識や視野を身に付けます。次の2ndステージでは、5つの視点から最も興味のある分野を選択し、関係する地域課題の解決方法を検討。3ndステージでプレゼンテーションを行います。

この授業に参加するのは、附属校である園田学園高等学校と園田学園女子大学に進学する生徒が多い宝塚東高等学校の2年生です。尼崎市役所や阪急電鉄の職員、商店街を運営する方、食品メーカーの技術者、農家など各フィールドの最前線で活躍する方々がを講師として招聘。日々現場に触れているからこそ見える課題や、SDGs実現に向けての地道な取り組みを語っていただきます。講師の方々も、高校生の意見を聞くことができる貴重な機会として、本プログラムに積極的に参加してくださっています。

園田学園女子大学がこのプロジェクトを始めたねらいは、大きく2つあります。1つ目は、SDGsはあらゆる視点からアプローチできると高校生に知ってもらうこと。例えば、同じ「食」という題材でも、「ビジネス」の視点からは地産地消、「教育」の視点からは食育、「ライフスタイル」の視点からはフードロスにアプローチするなど、視点が変われば答えも変わります。そして2つ目は、大学での学びが社会に還元されていることを実感し、学びの楽しさを知ってもらうこと。例えば、園田学園女子大学では「食」「マーケティング」といった分野を学ぶことができます。授業や実習を通して商品開発に必要なスキルを身に付け、土産商品を企画・販売し、町おこしに尽力したり、アレルギー対応食品を開発し、食卓に安全安心を届けたりするなど、社会貢献につなげることができる。大学での学びが持続可能な社会の実現に役立つことを実感し、進学へのモチベーションへとつながります。 第1回のガイダンスは株式会社WAVEが担当。入門編として、SDGsとは何なのか、高校生である自分たちはどのように関わることができるのかを考えてもらいました。

SDGsのハードルを下げる。

2020年度から順次実施されている新学習指導要領に「SDGsの担い手の養成」が明記されたことをきっかけに、小学校・中学校・高等学校でもSDGsを教育活動に組み込む学校が増えています。しかし、『SDGs』という言葉は聞いたことがあっても、そこに込められた想いや自分たちが学ぶ意義まで理解が及んでいない高校生にとって、自分ごととして捉えにくいのが現状です。初回の講義では、SDGsとは「意識が高い人が取り組んでいるものだから自分には関係ない」「英語の能力や特別な学力が必要だから自分には難しい」というネガティブなイメージを払拭します。 まずはわかりやすい表現を用いて「SDGsとは」という基本を説明し、理解を深めてもらいます。“食べ残しをしない”、“マイバッグを持って買い物へ行く”など、日常の生活の中で簡単に取り組める例を提示し、自分たちの小さな行動から始めることができるのが、SDGsの特徴の一つだということを感じてもらいました。その後、学生が主体的に取り組んでいるSDGs活動事例をいくつか紹介。同年代の人たちがSDGsについて主体的に考え行動していることを知り、自分にもできるかもしれないという自信を醸成します。また、バラエティに富んだ取り組みに触れることで、自分のアイデアで持続可能な社会づくりを実現できるかもしれないという思いをもってもらいました。

若者がSDGsに取り組むメリットとは何か。

SDGsは単なるボランティアではありません。その活動が持続可能な発展の実現に資すると同時に、利益を得ることを良しとしていることが画期的なポイントです。SDGsを考慮した社会や環境に優しい経営を行う企業や自治体が増えているのはそのためです。企業がSDGsに取り組むことで、お客様や取引先はその企業に対して、安心安全・信頼できるといったイメージを抱くようになり、ブランド力(企業価値)の向上や売り上げの向上につながります。では、学生がSDGsに取り組む「メリット」とは何でしょうか。

本プログラムには2つのメリットがあります。1つ目は、SDGs活動を通して社会の現状を知り、さまざまな知識を得ることで、将来の選択肢が広がることです。進路が定まっていない高校生にとっては、将来取り組みたいことや大学で深く学んでみたい内容を考えるガイドになり得ます。すでに志望分野が決まっている生徒にとっても、概念にとらわれずさまざまな角度から物事を捉え考える能力を養うことで、より明確に将来を思い描くことができます。園田学園女子大学が大事にしているのは「経験値」。実習や、地域・社会・世界とつながるプログラムなど、人の想いや考えに触れながら社会経験を積める多彩な学びの機会を設けています。講義やゼミで知識を蓄えるだけでなく、その学びを実践の場で活かすことで、経験したからこその気付きが確かな学びとして蓄積されます。失敗も含めて、経験から得られる知識や技術を重要視する「経験値教育」を展開する園田学園女子大学だからこそ実現できたプログラムと言えるでしょう。

2つ目は、将来のキャリア形成の中で強い武器になることです。今回の講義で取り上げた、エネルギー消費について配慮した「エシカル消費カフェ」の運営は、企画から商品開発、店舗運営まで、すべて学生主体で実現した取り組みです。主体性や行動力は現代社会で最も求められる能力の一つであり、就職時のアピールにもなります。また、SDGsに取り組む企業が急速に増加している今、SDGsの知見や経験は仕事をする中で実用的な強みになります。

「SDGsとは何か」を理解してもらうところから始まった今回の講演会。最初は難しいイメージを持つ生徒が多いようでしたが、特に身の回りで取り組めるSDGsの事例を紹介した時は、「なるほど!」と目を輝かせ、熱心にメモをする姿が多く見られました。また、生徒だけではなく、先生方からも「SDGsの意味、考え方、実践例、どれも勉強になりました」いうお言葉をいただきました。未来ある高校生にとって、視野を広げ、自由な発想でチャレンジする大きなきっかけとなるSASプロジェクトの今後に、ますます期待が高まります。