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【龍谷大学】意識改革がSDGs推進の要。仏教の思想を取入れた「仏教SDGs」とは

なるほど!

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龍谷大学は、全学をあげて国連の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいます。

「“No one will be left behind” 誰一人取り残さない」というSDGsの理念は、仏教の精神「摂取不捨(すべての者をおさめとって見捨てない)」と通じる面があり、浄土真宗の精神を建学の精神に据える大学として、積極的に取り組む意義があると入澤学長は言います。

「仏教SDGs」という独自の旗を掲げ、2021年度から一層活動を本格化させていく龍谷大学入澤崇学長に、SDGsに取り組む狙いや今後の方向性をうかがった。

なぜ大学がSDGsに取り組むのでしょうか。

『誰一人取り残さない』というSDGsの理念を初めて聞いた時、かなり東洋的な発想だと感じました。浄土真宗の阿弥陀仏の誓い「摂取不捨」、「すべての者をおさめとって見捨てない」と極めて重なり合う部分が大きいと思います。

SDGsの17の目標と169のターゲットには、貧困や飢餓、環境問題など地球上の深刻な課題が含まれており、人類の危機を真摯に受け止め、何とかして解決したいという強い熱意を感じています。

これからの社会を担っていく若者を育てる大学こそ、未来のためにこうした問題に向き合い、いち早くSDGsに取り組むべきだと思います。

具体的にはどのような活動をしていきますか。

龍谷大学では「ユヌス・ソーシャルビジネス・リサーチセンター(YSBRC)」を中核拠点に、ソーシャルビジネスを推進します。

YSBRCはバングラデシュで貧困者向け無担保融資を行うグラミン銀行を創設し、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士の名前を冠し、2019年に設立しました。個人の利益を越え、社会貢献や社会課題の解決につながるビジネスを学生や教職員に促していきます。

龍谷大学が建学の精神に据える浄土真宗は、「個人の生活を捨てて社会から出る仏教ではなく、社会の中にとどまり、俗人としての生活を送りながら宗教的感性を高める」という性格を持っています。つまり、内にこもらず社会に目を向けて行動することを推奨します。

龍谷大学も、いっそう他の大学や企業と積極的に連携していきたいと考えています。

なぜ仏教系の大学がビジネスを推進するのですか。

インドの片隅で生まれた仏教がどうしてアジア全域に広まったのか、ご存知でしょうか。実は普及において大きな役割を果たしたのは商人でした。今でいうビジネスマンです。

商人は当然、自己の利益を追求するものですが、仏教と接点を持つことで、より大きな利益を生むことに気がついていきます。お金だけでない、人々の利益や社会の利益に気がつき、それを広めていくのです。

日本でも三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)で知られる近江商人が全国に商売を広げました。「世間よし」という考えに強く影響を与えたのは仏教です。

近江商人の多くは浄土真宗のご門徒(信者)でした。これまで仏教はお坊さんの目線で語られることが多く、あまり知られていませんでしたが、実は商人と仏教はかけ離れたものではなく、非常に近しい存在だったのです。近江商人の「世間よし」の考えは社会にも役立つことを指し、まさにSDGsの精神に通じています」

まだSDGsに踏み込めない学生は、何から始めればいいですか。

まずは個人の意識改革です。貧困、教育格差、ジェンダーの問題など、今ある社会問題のすべては、人間が生み出したものです。人間の思考を変えなければ、問題の解決は難しいのです。

人間の歩みの中で、何が欠落していたのか。自分には何ができるのか。思考を働かせてほしいです。SDGsを単なるファッションで終わらせてはいけません。

地球規模の課題として新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るいました。コロナは人類にどのような示唆を与えているのでしょうか。

人間が利己主義で開発を進めた結果、本来は動物だけが住む自然の中にまで入り込み、動物だけで蔓延していたウイルスにも感染するようになりました。コロナ禍は人間社会のあり方やSDGsについて考える絶好の機会です。

人が前に進もうと思ったら、一旦立ち止まって考えるプロセスが必要になります。「歩む」という字は「止」と「少」ないと書きます。とかく前に進もうと思ったら、すぐに動こうとしてしまいますが、しっかりと歩を進めるには、少し止まって、思考を深めるプロセスが必要なのです。

社会に欠落しているものは何か。自分は何をすべきか。コロナは立ち止まって考える機会を与えているのだと思います。

最後に今後の目指す方向性をお聞かせください。

龍谷大学は2019年の創立380周年の際に、行動哲学「自省利他」を掲げました。

自らを省みて他を利するという意味です。今は近代文明の再構築を行う時期にさしかかっています。自己中心では立ちゆかなくなっているのです。他者の幸せや社会の利益を考え、自省利他を実践することが、社会を再構築するカギになります。

自省利他を別の言葉で言い換えた言葉に「まごころ」があります。龍谷大学は2039年の創立400周年に向けた長期計画「基本構想400」の中で、「まごころある市民を育む」を掲げました。

まごころとは、他者のために尽くす純粋な気持ちを指します。一人一人がまごころある市民としての素地を身につけ、自省利他を実践することが、基本構想400で目指す「世界の平和に寄与するプラットフォームになる」ことにつながると考えています。

入澤学長は仏教学の専門家で、シルクロードの宗教に造詣が深い方でした。仏教がアジア全域に広まった理由に、まさか商人が一役買っていたとは驚きでした。
ビジネスも宗教も自己中心では受け入れられず、相手を想い、社会にも資するものでなければ広まらず、持続可能でもないということでしょう。
今後、ユヌス・ソーシャルビジネス・リサーチセンターを通じ、多くの社会を変えるようなソーシャルビジネスが誕生することを期待しています。

記事提供

この記事は、龍谷大学が運営する「ReTACTION」からご提供いただいております。詳細は下記をご覧ください。

ReTACTIONの「TACTION」は「触覚」を意味します。
SDGsを推進するためには、これまでの社会のありようを、疑うことも必要です。
いま何が起こっていて、自分には何が出来るだろうか?
今一度、感覚を研ぎ澄まし、世界に触れてみれば、持続可能な社会につながるヒントを得ることが出来るかも知れません。

また、龍谷大学が掲げる行動哲学「自省利他」は、自らを省みて他を利するという意味です。
自己中心的な考え方をあらため、他者の幸せや社会の利益を考え行動することが、社会を再構築するカギになります。
ReTACTIONは「ReTA(利他)」の「ACTION(行動)」という意味も込めています。
意識改革と実践的な活動の両輪で、龍谷大学はSDGsを推進していきます。