「地域」と連携した行動の具体化・実践が重要度を増す昨今。「SDGs未来都市」として、公民連携の取り組みを推し進める東京都・豊島区のこれまでとこれからの展望を聞いた。
消滅可能性都市から、SDGs未来都市へピンチをチャンスに変えた秘訣は、「オールとしま」という連携のかたち
「地域×SDGs」を語るうえで外せない自治体がある。2014年に「消滅可能性都市※」に指摘されたこともある豊島区だ。すぐさま打開策として、文化を基軸とした持続発展するまちづくり「国際アート・カルチャー都市構想」を掲げて舵を切った。それから6年後の2020年には持続可能な都市として「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」※に東京都で初めてダブル選定。かつてのピンチをチャンスに変え、池袋を有する「文化のまち」へ、その姿は大きく変わった。環境にやさしい電気バス「IKE BUS」が、区内4つの公園をつなぐ「公園を核にしたまちづくり」でまち全体の周遊性を高めている。
豊島区の劇的な変化・発展の背景には、地域との強い連携があったと豊島区SDGs未来都市推進課の星野和也課長は語る。「これから目指したい豊島区の姿を、区民の皆様と膝を突き合わせて何度も話し合いました。豊島区の面白さは『有言実行』なところ。としまの一人ひとりが夢を語り、それを皆様とともに実行し、実際にかたちにしてきました」。まち独自の取り組みである「豊島区国際アート・カルチャー特命大使/SDGs特命大使」制度では、豊島区のまちづくりに賛同した区民や区内外の企業が、行政とともに主体的なまちづくりを進めている。現在すでに1600を超える方が賛同し、大使には学生や子どもも参加している。未来を担う若者たちにも「豊島区と、こんなことをしてみたい!」というアイデアがあれば、どんどん持ち込んでほしいと期待を寄せる。
2022年に区制施行90周年を迎えた豊島区。区民・企業からなる「オールとしま」の公民連携はさらに加速する。「豊島区と一緒に何かしたいという『想い』のある区民や企業の皆様とまちをさらに盛り上げていきたいです」。SDGsを切り口に国際アート・カルチャー都市として世界を見据える今、大阪・関西万博を通じたグローバルな情報発信にも力を入れる。
「SDGsの本質は、まちを愛する皆様との連携」。豊島区だからこそ、その言葉の説得力は大きい。区制施行100周年に向けて、としまのまちを愛する人たちとの「オールとしま」という連携はさらに強くなることだろう。
※ 消滅可能性都市:2040年までに20~39歳の若年女性人口が5割以下に減少し、将来存続できなくなる恐れがある自治体を指す。
※ SDGs未来都市:SDGsの達成に貢献する優れた自治体を国が選定するもの。SDGs未来都市の中でも特に先導的な取り組みは「自治体SDGsモデル事業」として選定される。
※この記事は2022年7月掲載誌発刊時点の情報です。
掲載誌
今回のインタビューは、東洋経済新報社と株式会社WAVEが制作した「東洋経済ACADEMIC SDGsに取り組む大学特集 Vol.4」に掲載されています。
東洋経済ACADEMIC SDGsに取り組む大学特集 Vol.4「行動の10年」の新たなステージへ 持続可能な社会実現に向け加速する「連帯・連携」
2015年に国連で掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)。SDGsをめぐる大学の活動は、啓発、実践を経て「行動の10年」を見据えたさらなる加速と深化が求められている。それらを具現化すべく、国際社会や地域社会における「連帯・連携」もパワフルに展開中であり、各界の注目は高まる一方である。本誌は、シリーズ第4弾として、国連、政府、産業等、バラエティ豊かな各大学の連携状況を克明にレポート。SDGsによる大学教育革新の中核に迫る。