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スポーツをサステイナブルに!パリオリンピック・パラリンピックのSDGs取り組みを紹介

なるほど!

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4年に一度のスポーツの祭典、オリンピック・パラリンピックの開幕が目前に迫ってきました。今回の開催地パリは、SDGs先進都市の一つ。大会史上で最高レベルのサステイナブルでインクルーシブな運営に注目が集まっています。持続可能性を追求しつつ、観客を熱中させるための取り組みとは? スポーツ観戦だけではない、新たな見どころをご紹介します。

大会前に知っておきたい。オリパラと環境問題

オリンピック・パラリンピックは、長きにわたり国籍や文化の違いを超えた相互理解や平和の実現に貢献してきました。しかしながら、その裏側にはさまざまな環境問題が潜んでいるのをご存知でしょうか。例えば、競技施設建設のための土地開発や工事で引き起こされる自然破壊。特に自然の立地を生かしたコース設置の際は、生態系への影響も考えられます。そのほかにも選手・観客・スタッフなどの移動や会場運営に伴う温室効果ガス、ゴミ・廃棄物の発生など、大会が環境に与える影響は多岐にわたります。

オリンピックと環境問題が注目を集めるきっかけとなったのは約50年前。1972年札幌冬季オリンピックで、競技コース造成のための原生林伐採に対し、地元環境団体が抗議を寄せたのが始まりでした。その後も各大会で環境破壊への抗議が続き、国際オリンピック委員会(以下IOC)は1990年に、「スポーツ」「文化」というオリンピックの柱に「環境」を追加。以来、「グリーンゲーム(環境に配慮したオリンピック大会)」の考え方を根底に運営してきました。

環境への配慮は大会ごとに強化されており、2021年東京大会では脱炭素への取り組みやメダルへのリサイクル金属の活用、会場備品の3R(リサイクル・リユース・リデュース)などが行われました。さらに同年には、IOCがパリ協定(気候変動に関する国際的枠組み)に沿って運営することを表明。大会に関わる直接および間接の二酸化炭素排出量を2024年までに30%、2030年までに50%削減することを公約として掲げました。公約から初の開催となるパリ大会。どんな取り組みがなされるのか、注目が高まっています。

気候変動と向き合うためのパリのチャレンジ

パリ大会では、大きなミッションの一つに「気候への影響を抑える」ことを掲げています。ここでは、そのための主な取り組みを紹介します。

二酸化炭素の排出量削減

パリ大会では、「クライメート・ポジティブ」な大会運営によって、二酸化炭素の排出量50%削減を目指しています(クライメート・ポジティブとは、物事の工程で二酸化炭素の排出量よりも削減量の方を多くすること)。これまでの大会で排出されていた二酸化炭素の量は平均350万トンと推定されており、本大会ではその半分以下の150万トン未満におさえることが目標です。達成のために、Avoid(回避)・Reduce(削減)・Offset(相殺)の「AROアプローチ」が取られます。

・Avoid(回避)…使用する設備の全体の95%を既存あるいは仮設でまかない、二酸化炭素の排出を回避、または大会終了後も地域で利用する施設のみを建設する。選手村の施設には木材と有機栽培による資材を使用。

・Reduce(削減)…会場の省エネや再生可能エネルギーの利用、観客の移動手段を公共交通機関・自転車・徒歩に限定することなどにより、二酸化炭素排出量を削減。選手村施設や競技場の屋上、さらにはセーヌ川には太陽光発電機が設置(大会後は別の場所に移転)され、大会期間中の電力を補う予定です。

・Offset(相殺)…森林や海洋保護、生物多様性のための保護プロジェクトを大会期間の前から実施し、大会で排出される二酸化炭素を相殺。

クライメート・ポジティブな運営のためには、上記以外にも備品調達や大会グッズの製造などさまざまな場面で小さな心掛けが必要です。そこで、大会に関わる全スタッフの意識づけのため、本大会ではスタッフが無料で利用できるアプリ「The Climate Coach for Events」が導入されました。
このアプリは「ケータリング」「会場準備」「販促品」など全10カテゴリーから選択し、運営に関連する情報や数値を入力すると、二酸化炭素量排出量を自動で推定。排出の要因を特定し、削減のための具体的なアクションを提案してくれます。実際にどれほど二酸化炭素を削減できたのかを可視化することで、関係者一人ひとりの意欲を高めます。

ペットボトルは持ち込み禁止

さらに注目すべきは、大会へのペットボトル持ち込みの禁止です。パリのイダルゴ市長は、「パリ大会を使い捨てプラスチックのないイベントにする」と発表。競技場にはペットボトルのゴミ箱を設置しないという徹底ぶりです。大会スポンサーのコカ・コーラはガラス瓶で飲料を提供するほか、マイボトルに給水が可能なスポットを提供します。また、選手村の食堂でも再利用可能な食器が導入されるとのこと。パリから世界へ、プラスチックフリーの飲食の在り方が提示されます。

食事の6割以上がプラントベースに

観客に販売される食事の60%以上、メディアやボランティアスタッフなど大会関係者向けの食事の50%以上が、環境負荷が低いとされる植物由来の原材料を用いたメニューになります。また、食品輸送による二酸化炭素排出を避けるため、その地で採れた食材を使用する「地産地消」を推奨。美食の国・フランスならではの、エコで豊かな食事が楽しめそうですね。

インクルーシブな大会を目指して

環境保護のみならず、差別がなく誰もが輝けるインクルーシブな大会である点も注目に値します。パリ大会では「Games Wide Open:広く開かれた大会」をスローガンに掲げ、パリの街や歴史的建造物を世界に開放し、すべての人にとって特別な大会となることを目指しています。

男女同数の選手が出場

すべての人が平等に楽しめてこそ、インクルーシブで持続可能な大会といえるでしょう。歴史を遡ると、女性が選手としてオリンピックに参加できるようになったのは、奇しくも1900年のパリオリンピックでした(997人の選手のうち22人の女性が出場)。
(出典|男女共同参画白書 平成30年版 スポーツにおける女性の活躍
それから100年以上がたつ今回のオリンピックでは、史上初めて男女同数(5,250人ずつ)の選手が出場を予定しています。また、性差を超えて参加できる男女混合競技として、新たに「マラソン競歩混合リレー」が加わります。「男子50km競歩」に替わる新種目で、男女それぞれ1人ずつでチームが構成され、合計25チームが参加します。距離はマラソンと同様の42.195kmで、約10kmずつ4つのステージを男女交互(男、女、男、女)に歩き、タイムを競います。

ただ、IOCはトランスジェンダーの選手の出場扱いを各競技連盟にゆだねており、一部の競技ではトランスジェンダー選手の出場が禁止されています。トランスジェンダー選手のスポーツの場における公平性はこれまでも議論されてきましたが、解決の糸口が見えていません。トランスジェンダー選手の出場を巡っては、今後もカテゴライズや出場枠の見直しなど検討が必要となるでしょう。

オリンピックコースを体験できる市民マラソン大会

男子オリンピックマラソン終了後の同日夜に、同じコースを一般ランナーが走れる「パリ市民マラソン」が開催されます。フルマラソンと10kmマラソンの2種が同時開催され、10kmマラソンは障害のある人も参加が可能です。マラソンコースは、フランス革命時に人々がヴェルサイユ宮殿まで行進したルートから着想を得たもの。アスリートが繰り広げた熱戦の余韻を感じながらフランスの歴史を味わえる、貴重なイベントになるでしょう。

スポーツ観戦をサステイナブルに楽しもう

オリンピック・パラリンピックは、世界的なイベントであるだけに環境や社会への影響は計り知れません。選手たちの熱い戦いだけではなく、運営の責任の大きさにも意識を向けてみてはいかがでしょうか。パリオリンピックには、今後私たちがスポーツを楽しむうえでヒントとなる取り組みが満載です。例えば、スポーツ観戦に行くときにはマイボトルを持参する、公共交通機関を利用する、遠方に足を運ぶ場合はその地の食材を堪能するなど……。オリンピック・パラリンピックをきっかけに、自身の健康のために何か手軽に始められるスポーツに挑戦するのもよいかもしれません。小さな心掛けで、スポーツをサステイナブルに楽しみましょう。

<参考>