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点字を覚えて読んでみた。 ――触れてわかった難しさ

なるほど!

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目の不自由な人でも指で触って読むことができる「点字」。身の周りのさまざまな場所で使われており、点字の存在を知らない人はほとんどいないでしょう。 しかし、その構造や読む難易度について、皆さんはどれほど想像できますか?モールス信号のように、文字の表し方をすべて覚えてしまえば、容易に読むことができるのでしょうか。今回は、点字の習得に一からチャレンジしてみた筆者の気づきを共有します。

6点を駆使して文字を表す、点字の構造

点字は、基本的に横2列×縦3段の6点を1マスとし、文字を表します。日本語の点字では、左の上段と中段、右の上段の3点で母音を表し、左の下段、右の中段と下段の3点で子音を表す構造が基本です。一部の行(や行、わ行)や「っ」などは例外のルールがあり、濁音・半濁音 や「きゃ」などの拗音は2マス使って表されます。6点を駆使して50音+αの文字を表せるとは、なんと無駄がなくわかりやすい文字構造なのでしょう。 大学時代に言語分野を専攻していた筆者は、文字としての秀逸さを感じざるを得ませんでした。

実際に読んでみて直面した、触って読む難しさ

規則性が強い点字の構造のおかげで、日本語の主な文字を全て覚えるまでにかかった時間は10分足らず。予想していたよりはるかに速く覚えられたことに嬉しくなりつつ「いざ、読んでみよう!」と自宅の中にある点字を捜索。浴室乾燥機の操作パネルに点字を見つけ、目を閉じて指で触れました。

・・・読めない。点字の感触は確かにあって、読もうとしているのに、1文字も読むことができなかったのです。驚いた私は目を開けて、目で点字を確認。すると「乾燥」と漢字で書かれたボタンの上に「かんそ」と点字で書かれていることがわかりました。目で見たらちゃんと理解できるのに、触るだけでは全くわからなかった体験から、普段自分がいかに視覚情報を頼りにしているか、視覚が制限されたときの困難に改めて気付かされました。

調べたところ、やや古い調査ですが、2006年の厚生労働省の調査において、視覚障害がある人の中で「点字ができる」と回答したのは12.7%でした。また、北海点字図書館のホームページによると、高齢で中途失明した人の点字習得は難易度が高く、利用が少ない一因となっているとのこと。指先で点字を読む難しさを体感したことで、筆者はこの現実を強く意識しました。加えて、音声で情報を入手する手段が発達することの重要性を実感。近年、音声コードや公共施設での音声案内が普及し、読書においてもオーディオブックのサービスが広まっています。こうした環境整備は、視覚障害のある方々の生活の質を著しく向上させるのではないかと改めて感じました。

当事者の状況を知り、寄り添うことが合理的配慮の第一歩

街では、目の不自由な方を誘導するための点字ブロックも見かけますね。
点字ブロックの発祥は実は日本。岡山県の三宅精一氏が発明し、世界中に普及していきました。

2024年4月に施行された障害者差別解消法の改正法により、障害のある人に対する「合理的配慮」の提供が事業者に義務付けられました。 さまざまなケースで、適切に合理的配慮を提供するには、障害のある当事者のおかれる状況や不便さを知ることが不可欠です。

目の不自由な人のために生み出された、視覚を使わずに読める点字。視覚障害がない人も、点字一覧表と照らし合わせつつ、点字を読んでみてはいかがでしょうか。視覚障害のある人の世界を体感し、理解を深め、必要なサポートについて考えられるきっかけになるかもしれません。

【こぼれ話】
浴室乾燥機の「涼風」のボタンには「りょー」、「暖房」のボタンには「だん」と点字で書かれていました。途中まで、要点だけしか書かれていない場合があることも、自分で読んでみて初めてわかったことでした。

<参考>
点字のしくみ|にってんキッズページ – 日本点字図書館
平成18年身体障害児・者実態調査結果 – 厚生労働省
点字について – 社会福祉法人ほくてん(北海点字図書館)
視覚障害のある方のための「音声コード」について – 内閣府