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6月はプライド月間。いま一緒に考えたい、性の多様性のこと。

毎年6月は、性の多様性を祝福し、LGBTQ等の性的マイノリティに対する理解や権利擁護を訴えるパレードやイベントが世界中で開催される「プライド月間」です。SDGsでは性的マイノリティをとりまく問題について、明確なターゲットを定めていませんが、SDGsの基本理念「誰一人取り残さない」の対象には、当然、性的マイノリティに属する人が含まれます。本記事では、誰もが自身の性のあり方を否定されることなく、安心して暮らせる社会の実現のために、一人ひとりがどうふるまうべきか考えます。

セクシュアリティに関連する用語を知る。――性の多様性を考えるはじめの一歩

近年、メディアで性の多様性に関する話題が取り上げられる機会も多く、「LGBT」という用語とその意味をご存知の方も多いと思います。しかし、L・G・B・Tの4つ以外にもセクシュアリティ(性のあり方)を表す用語は多くあります。性がいかに多様であるかを理解し、このトピックについて考えを深めていくために、まずは基本的な用語について整理しましょう。

※セクシュアリティにかかわる用語の意味や包括する範囲などは、個人や文化圏により異なることがあります。下記はあくまで一つの解釈として捉えてください。

セクシュアリティを構成する基本的な概念を指す用語

・生物学的性(Sex)
外性器・内性器などの特徴から、生物学的・形態学的・解剖学的に区分される性。

・性的指向(Sexual Orientation)
どういった対象に性的な感情・恋愛感情を向けるか。

・性自認(Gender Identity)
自分の性別は何であるか、という認識。

・SOGI
Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字をとったもので、「性的指向と性自認」を表す。SOGIは、性的マイノリティのみならず、すべての人にかかわる包括的な概念である。

性的指向にかかわる用語

・ヘテロセクシュアル(異性愛)
異性を好きになる人。

・ホモセクシュアル(同性愛)
同性を好きになる人。

・ゲイ
男性を好きになる男性。性的指向が男性に向いており、性自認が男性である人のこと。

・レズビアン
女性を好きになる女性。性的指向が女性に向いており、性自認が女性である人のこと。

・バイセクシュアル(両性愛)
男性・女性のどちらも好きになる可能性がある人。

・パンセクシュアル(全性愛)
性的指向が性別によらない人。相手の性別が男性でも、女性でも、Xジェンダーでも、好きになった人が好きという人。

・アセクシュアル(無性愛)
他者に対して性的欲求を抱かない人。恋愛感情は抱くが、性的欲求は抱かないという人もいる。恋愛感情を抱かない人は「アロマンティック」と称される。

性自認にかかわる用語

・シスジェンダー
生物学的性と性自認が一致している人。

・トランスジェンダー
生物学的性と性自認が異なる人。

・Xジェンダー
性自認が男性でも女性でもない人。例えば、男女の中間に位置すると考える人や、男女両方に当てはまると考える人などがいる。

その他のセクシュアリティにかかわる用語

・インターセックス
性分化疾患で、生物学的性が一般的な男性・女性のどちらにも一致しないか、あいまいな状態である人。

・クエスチョニング(Questioning)
自らのセクシュアリティが定まっていないか、意図的に定めていない人。

・クィア(Queer)
社会的に規範的とされる性のあり方以外を包括する言葉。「LGBTQ」という表現の「Q」は、クエスチョニングやクィアを指す。

性の多様性のトピックでよく登場する用語

・アライ(Ally)
性的マイノリティの理解者・支援者のこと。アライになるための明確な条件はなく、性的マイノリティの生きづらさや困難に寄り添い、支援や行動変容をする人を指す。

・プライド(Pride)
英語で「誇り」の意味を持つ語で、性的マイノリティの社会運動においてしばしばスローガンとして使用されている。性的マイノリティ関連のパレード自体を「プライド」と呼ぶこともある。プライドのシンボルとして、レインボーカラーがよく使われる。

・カミングアウト
性的マイノリティが、自分の性自認や性的指向を打ち明けること。

・アウティング
本人の承諾なしに、他者のセクシュアリティを暴露すること。プライバシーを侵害し、信頼を裏切るという点で、決して許されない行為である。


上記のうち、明確に意味を理解していた用語はどのくらいありましたか?初めて知ったものもあったでしょうか。もし皆さんが周りの人からセクシュアリティについてカミングアウトを受けた時、その概念を正しく知っていた方がきっと本人に安心感を与えられるでしょう。セクシュアリティの呼称や意味を知ることは、性の多様性について理解し、性的マイノリティの当事者に寄り添う第一歩となるはずです。

ただ、用語の定義に他者を当てはめる言動や思考は慎むべきです。今回紹介した用語はほんの一部で、セクシュアリティを表す用語は他にも多く存在します。まだ名前がついていないセクシュアリティもあるかもしれません。性のあり方はグラデーションのように人それぞれ異なります。そして基本的に他者が決めるものではありません。用語を覚えたことで何もかも分かった気になって「あなたはバイセクシュアルですね」のように決めつける発言はしないようにしましょう。

一緒に考えよう。あらゆる性の人が気持ちよくコミュニケーションする方法

私たちは普段の生活の中で、どのように性の多様性を尊重できるでしょうか。日常でよくある2つのシーンを例に考えてみましょう。

【シーン①】「彼氏/彼女はいるの?」

親しい相手に恋人の有無を尋ねるとき、異性愛などを前提とした質問は避けるべきです。「彼氏/彼女はいるの?」の代わりに、質問相手や恋人の性別を限定しない「恋人はいるの?」などの表現の方が適切でしょう。加えて気にしておきたいのは、前述のように、誰に対しても性的な感情・恋愛感情を抱かない人もいるということ。そのようなセクシュアリティの人に配慮して、恋愛の話自体を禁忌とする考え方もあるかもしれません。

これに対して、現時点の筆者としては、恋愛の話を完全に避ける必要はないと考えています。恋愛は多くの人にとって、人生を形づくる大きな要素のひとつです。親しい友人に恋愛の相談をしたり、結婚観について語り合ったりすることで、仲が深まることもあるでしょう。お互いが話したい、聞きたいと思っている間柄であれば、恋愛の話は楽しいものです。大切なのは、相手をしっかりと見つめて、恋愛に関する自己開示の意思やセクシュアリティを尊重して会話すること。「恋人はいた方がよい」、「みんな恋愛をするものだ」、「恋人は異性であるのが普通」などと決めつけず、相手を尊重する姿勢さえあれば、気持ちのよい会話ができるのではないかと考えます。

【シーン②】3人称代名詞の使用「彼は/彼女は」

日本語の3人称代名詞の「彼」と「彼女」。これは性別二元論(性別を男女という2つの枠に分類する社会規範)に基づいた語です。「彼/彼女」と呼称されることは、生物学的性と性自認に違和がある人にとって不快である可能性があります。

外国語には、男女の枠にとらわれない3人称代名詞を持つ言語があります。スウェーデン語の「hen(※)」、英語の3人称単数としての「they」などです。これらの語は元々存在していたわけではなく、現代に入ってから、男女に限定されない性自認の人のために新しく言語の中に追加された単語のようです。
(※  スウェーデン語には、男性を指す「han」、女性を指す「hon」という3人称代名詞もあります。)

日本語で性別の意味を持たない3人称代名詞に代替できそうなのは、「この人」「この方」「こちら」などの表現でしょうか。筆者は、どれも最適解とはいえない印象を持っています。日本語では、文法上3人称代名詞の使用を余儀なくされる場合はあまりないため、3人称代名詞を使わずに「○○さん」と名前で呼ぶのがよいかもしれません。


どちらのシーンにおいても、明確な正解といえる行動はないと思います。人それぞれ気持ちのよい対応は違うからです。共通して避けなければならないのは、自分の常識で他者の気持ちを決めつける行為や、他者の価値観や意思を否定すること。そしていつも大切なのは、相手を思いやることです。心地よい人間関係を築くための根幹となる姿勢ではありますが、性のあり方は実に多様で完全に分かり合うのが難しいからこそ、特に強く意識すべきでしょう。

分かり合う難しさを受け入れ、柔軟であろう

既存の性規範と自身の性のあり方が概ね一致している人は、性的マイノリティが感じる不安や不快な状況にどうしても気付きにくい部分があります。まずは、よく知らない・気付けていないという事実を認識し、多様な性のあり方を理解しようとすることが大切です。そして自分の言動・行動を振り返り、あらゆるセクシュアリティを持つ人への思いやりのあるふるまいへと変容させていく。こうした一人ひとりのアクションが、やがて性的マイノリティがより生きやすい社会を実現するための大きな後押しとなるでしょう。

冒頭で触れたように、6月はプライド月間として、多くの団体や企業などがプライドに関連した活動を展開することが予想されます。レインボーカラーに注目しながら身の周りのプライド活動の情報をキャッチし、気になったものにはぜひ参加してみてください。

<参考>