お兄さんやお姉さん、年の近い親戚、近所の方などから譲り受けた物を使ったことはありますか?「お下がり」とは、年長者が使用していた物品を年下の者に譲り渡すこと、または譲られた物品を指します。子どもの頃、もらったりあげたりした経験がある方も多いのではないでしょうか。
実はこの「お下がり」という行為は、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に深く関連しています。リユースとして廃棄物削減に貢献するだけでなく、ファストファッションがもたらす大量生産・大量消費・大量廃棄の問題、さらには低賃金労働といった社会課題にアプローチする方法でもあります。
モノが語る、家族の記憶と絆
筆者が幼いころは、近所の方から「お下がり」 をもらったり、弟妹に渡したりする機会がよくありました。しかし、大人になり、自分で欲しいものを選んで購入するようになってからは、「お下がり」という言葉を耳にすることがめっきり減ったように感じます。一方で、両親から「もう使わないから」と譲り受けた服やかばん、財布、アクセサリーなどが増えてきました。 よく考えてみると、これも「お下がり」の一種かもしれません。これらのアイテムは、自分では選ばないような少し特別感のあるデザインや懐かしい雰囲気が魅力的で、お気に入りの一つです。また、最近の流行とは少し異なる、個性的なデザインや、少し背伸びをした雰囲気のものも多く、愛用しています。古着やレトロな雰囲気がお好きな方や、いつものファッションに変化を加えたい方は、「お下がり」を取り入れるのも良い選択肢かもしれません。
また、祖母が亡くなった際に、生家の整理中に財布や服など気に入ったデザインのものを見つけ、形見として譲り受けました。それらを身に着けていると、祖母がそばで見守ってくれているような温かい気持ちになります。ものを通じて故人の心を感じられる──そんな瞬間を大切にしたいと思っています。
「お下がり」が作る、地球と心にやさしい未来
近年、「お下がり文化」が薄れつつあるという話を耳にします。その背景には、コロナ禍や地域間のつながりが希薄になったこと、近所付き合いを煩わしく感じる人が増えたことなどが挙げられます。こうした時代だからこそ、「お下がり」という選択肢を見直してみるのはいかがでしょうか。もちろん、相手に無理やり譲ったり、ねだったりするのは望ましくありませんが、「こんなものが余っているんだけど、使ってみる?」と声をかけたり、「実家で見つけたこのアイテム、譲ってもらえないかな?」とお願いしてみるのも良いかもしれません。「お下がり」を通じてアイテムが次の人へと受け継がれることで、物の価値がさらに広がります。地球にやさしい選択をしながら、物を通して心のつながりを感じられる瞬間を、ぜひ体験してみてください。