SDGsゼミリポート | サステイナブルな未来を多様な視点で探求する

SDGsゼミリポート | サステイナブルな未来を多様な視点で探求する

WAVELTD
トップ > 研究員のSDGsな日々 > SDGs達成のカギは芸術?アートのもつ力とSDGs啓発に関する考察

SDGs達成のカギは芸術?アートのもつ力とSDGs啓発に関する考察

なるほど!

27

達成期限まで残り5年で、SDGsがさらに前に進むために、芸術が一役買う?芸術の社会的役割とSDGsについて考察します。

芸術は不要不急?コロナ禍に直面した疑問

2020年、新型コロナウィルスの流行。緊急事態宣言が発出され、「不要不急の活動」は一時休止することとなりました。生活は一変し、人々の価値観にも大きな影響を与えた出来事だったように思います。例えば、オンラインミーティングの浸透。当時、私は就職活動中で、急遽のオンライン面接に戸惑い、苦戦したことを覚えています。しかし、今となっては、オンラインで遠くの人とコミュニケーションを取ることは当たり前です。このように社会のデジタル化を大きく加速させたのは、新型コロナウィルスの流行がきっかけでした。

もう一つ、当時の私にとってつらかったのが、「不要不急の活動」を控えなければならないとき、美術館・劇場・ライブハウスなど芸術関連施設がいち早く休業したこと。人の命を守るため、致し方ないことだとわかっていますが、この出来事は「芸術は不要不急なのか?」「芸術が社会にもたらすものって何?」そんなことを悶々と考え始める契機になりました。

人の心が動くと、社会が動く

すべての芸術がそうである必要はないと思っていますが、芸術のもつ力を平たく言うならば、私は「人の心を動かす力」だと考えています。そして、私がそれを感じたのは、これがまたコロナ禍でした。当時、多くのアーティストが活動を制限される中、SNSを通して、「おうち時間を楽しむこと」を目的として、さまざまな発信がされていました。あるミュージシャンはオリジナルの曲をつくり、そのオリジナル曲を多くの人がカバーし、オンラインでセッションをしました。ある劇団はZoom演劇を、ある芸人はZoomでコントを。その時、それぞれができる手段で社会を元気づけようと活動を続けていました。どれもSNSで大きな話題を呼び、そこには、ただ単なる「お楽しみコンテンツ」ではないパワーがありました。

芸術が「人の心を動かす力」をもっているとしたとき、もう一つ注目したいのが、地域で行われるアートプロジェクトです。アートが美術館を出て、街や自然と共生するアートプロジェクトでは、その地域の特徴・魅力が題材にされることが多くあります。例えば、兵庫県神戸市で毎年秋に実施される「神戸六甲ミーツ・アート」では、六甲山の自然や廃ホテル、教会などが表現の土台となります。訪れた来場者は、芸術の鑑賞を通して地域のことを少しずつ知り、少しずつ地域に愛着が湧いていきます。地域型アートプロジェクトの大きな特徴は、地域の魅力を、芸術という手段を通して伝えるという行為にあり、これは地域活性化の効果的な取り組みだと考えています。

SDGsを、芸術表現を通して発信すること

長々とSDGsと関係のないような話をしてしまいましたが、SDGsをアートという手段で捉え直して、発信する行為は効果的なのではないかと私は思っています。

例えば、河川などに落ちているゴミや漂流物を使って様々な造形物を制作する淀川テクニックさん。ゴミをコラージュして作られた動物の大きなオブジェ。その迫力や今にも動き出しそうな臨場感に圧倒されますが、視点を変えてみると、これだけの量のゴミが河川に放棄されていたのかと気づきます。

コロナ禍に私が強く感じたように、アートはその場にいる人だけでなく、インターネットを介して多くの人の心を動かす力を持ち、地域型アートプロジェクトがそうであるように、伝えたいことをさりげなく人々にインプットする力を持ちます。

すべてのアートに意味があり、社外的意義がある必要はないと思っています。ただ、「SDGs」という言葉そのものがマンネリ化し、時には煙たがられてしまう今、その考え方を社会に発信する手段として、私は芸術に期待をしています。

 

【おすすめのアートの事例】

淀川テクニック
2003年に大阪府の淀川を拠点として活動を開始。ゴミや漂流物などを使い、さまざまな造形物を制作する。その土地ならではのゴミや、人々との交流を楽しみながら行う滞在制作を、日本全国・海外でも多数行なっている。

神戸六甲ミーツ・アート
神戸市の六甲山上で毎年開催される現代アートの芸術祭。16回目の開催となる「神戸六甲ミーツ・アート2025」は会期を延長。8月23日(土)~11月30日(日)の100日間にわたり六甲山上に芸術作品が出現する。
https://rokkomeetsart.jp/news/detail/rma2025/

瀬戸内国際芸術祭
瀬戸内の島々を舞台に、3年に1度開催される現代アートの祭典。春・秋・冬の会期に分かれ、季節毎の瀬戸内の魅力を体験できる。2025年は「瀬戸内国際芸術祭2025」が開催される。
https://setouchi-artfest.jp/

TAGsタグ

芸術
SDGs
アート