新しい年を迎えると「今年はどんな1年にしよう」と考える人が多いでしょう。健康のこと、仕事のこと、生活のこと。内容はさまざまですが、不思議と節目には目標を立てたくなるものです。個人の抱負から、SDGs(持続可能な開発目標)のような世界規模のものまで、目標を立てることにどんな意味があるのか。その問いを18世紀ドイツの哲学者、イマヌエル・カントの思想から考えてみました。まだ今年の目標を立てられていないという方は、本記事を通してよりよい自分の姿、地球の未来に思いをはせてみませんか。
カント哲学から見る、目標を立てるべき理由
近代哲学の祖と言われるイマヌエル・カント(※)は、人間とはどういう存在であるかという問いに切り込み、世界の中で正しく振る舞う方法を明らかにしようとした哲学者です。著書『永遠平和のために』が、後の国際連合のひな型になったことでも知られています。
カントは人間を、感情や欲望に流されず「どう生きるべきか」を律しながら問う理性的な存在と定義しました。ここで重要なのは「理念」という概念です。理念は、現実に達成可能な設計図ではなく、進むべき方向を示す指針です。たとえ完全な実現が難しくても、高い理想を目指すことで今の行動の質が向上し、自分をより高めていくことができる。その姿勢こそが、人間の尊厳であり価値であると説きました。
私たちが目標を掲げるべき理由はここにあります。目標を通して自分がどうなりたいのかを明確にする行為が、理想に向かう姿勢と重なるからです。達成できるかどうかの前に、理想を定めることにも意味があります。三日坊主で続かない…という方でも、まずは目標を立てた自分をほめてあげてください。
※イマヌエル・カント(1724–1804)
18世紀ドイツの哲学者。主著に『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』がある。人間理性の限界を明らかにしつつ、行為を導く「理念」や、人間を目的として尊重すべきだとする倫理思想を提示し、近代哲学に大きな影響を与えた。
今こそ見直したい、SDGsという「世界の目標」

「理想を示すための目標」という考え方は、SDGsとも重なります。SDGsは2030年までに達成すべき世界共通の17の目標です。貧困や不平等、環境問題など、どれも一朝一夕で解決できるものではありません。それでも国連がSDGsを掲げたのは、世界がどんな未来へ進むべきかを共有するためでした。すべての目標を完全に達成することが難しくても、それを掲げることで政策や企業活動、そして個人の選択がよりよい方向へと調整されていく。SDGsは世界に自律をもたらし、行動を束ねるための理念だと捉えることができます。
実現しやすい小さな目標で理想を叶える
目標は立てることに意味があると語ってきましたが、そうは言っても達成できる方がよいのは間違いありません。大きな目標を小さな目標に分解して、一つずつ行動に移していくことが大切です。SDGsでは17のゴールを達成するために、具体的な行動が盛り込まれた169のターゲットが設けられています。ご自身で目標を設定する際は「SMART目標」というフレームワークを活用してみてください。
SMART目標
S:Specific(具体的)
誰が読んでも分かるように、具体的な行動で表現する。
M:Measurable(測定可能)
進捗や達成度を数字で表す。
A:Achievable (達成可能)
現実的で、努力すれば達成できる目標にする。
R:Relevant (関連性がある)
個人や組織のビジョンと関連性のある目標にする。
T:Time-bound (期限がある)
いつまでに達成するか、明確な期限を設定する。
私自身は、ウクライナやパレスチナの情勢が報道されなくなるにつれ、目標16の「平和と公正をすべての人に」への意識が薄れていることに危機感を抱いています。SMART目標に従って、まずは自分の関心のある地域の情報を毎日5分間は調べるという目標を立ててみました。
新年という節目のタイミングで、地球社会のことや仕事、勉強、生活など、まずは理想を言葉にしてはいかがでしょうか。皆さんにとって、そして地球社会にとって実りある1年になることを願っています。
(参照)
https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/culture/immanuel_kant/
https://globis.jp/article/659/













