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平成レトロブームから考える「ご自愛」のSDGs ──童心に帰るひとときが、自分自身の持続可能性を高める

なるほど!

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引き出しの奥の宝物が教えてくれること

最近、雑貨店やカプセルトイ売り場で、「懐かしい!」と思わず足を止めてしまうことはありませんか。キラキラしたシール、たまごっち、あるいは子どもの頃に夢中になったアニメのキャラクター。今、30代から40代を中心に、平成初期の文化を懐かしむ平成レトロブームが巻き起こっています。

こうした動きの中で注目されているのが「キダルト(Kidult)」です。これは子ども(Kid)と大人(Adult)を掛け合わせた造語で、子どもの頃に楽しんでいた遊びや玩具を、大人として自由に楽しむ人たちを指します。キダルト消費の市場規模は年々拡大しており、日本玩具協会が主催する日本おもちゃ大賞にも2024年からキダルト部門が新設されました。

かつてはおもちゃに興味を持つ大人がネガティブに捉えられていた時代もありました。しかし今、自己肯定やセルフケアの一環として、そうした楽しみ方を肯定的に捉える動きが広がっています。そしてそれは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成とも深く結びついているのです。

モノではなく、心の平穏のためのアイテム

いわゆる大人買いとキダルト消費は、似ているようでいて、その本質は大きく異なります。アイテムの収集や所有そのものを目的とする大人買いに対し、キダルト消費の原点にあるのはノスタルジーや安らぎ、癒しです。

現代を生きる私たちは、仕事や家事、人間関係といった多くのプレッシャーにさらされています。そんな中で、子どもの頃に感じた安心感や純粋なワクワク感を思い出させてくれるアイテムを側に置く。これはストレスを緩和し、自分自身の内面をケアすることで、心の安全基地を作る行為といえます。社会的な役割を一度脱ぎ捨てて、「自分が本当に好きなものは何か」という本音に向き合う。キダルトとは、自分自身を取り戻すためのマインドセットなのかもしれません。

幼いころから好きだったものを見ていると、心が和みます

「自分を愛でる」動きが世界的なトレンドに

自分を大切にする動きは、今や世界的な潮流となっています。画像検索・共有プラットフォームPinterest(ピンタレスト)が発表した2026年のトレンド予測でも、自分らしさやセルフケアといったキーワードが至るところに見受けられます。

加えてコロナ禍以降、いかに自分の機嫌を自分で取るかという「ご自愛」の精神を、私たちは大切にするようになりました。自らを追い込んで頑張ることを美徳とする旧来の価値観から、自身を大切にしながら持続的に活動する価値観へと、シフトしているのです。

サステナブルな社会は、健やかな「私」から始まる

ここで、視点をSDGsに切り替えてみましょう。趣味に没頭し、心を整える動きは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に直結します。SDGsと聞くと、環境問題や国際支援などの大きなテーマを想像しがちですが、活動の主体となるのは私たち一人ひとりです。

だからこそ、その土台となる自身の健康を後回しにして、本当の意味でのサステナビリティは語れません。まず自分の健康に目を向け、ケアすること。自分を慈しむ心の余裕を持つこと。これこそが、社会を変えるための最も身近で重要なSDGsの第一歩ではないでしょうか。

心を軽くする3つのご自愛レシピ

今すぐ始められる、キダルト的な遊びを取り入れるセルフケアを3点提案します。

1)役に立たないけれど好きなものを飾る

効率や生産性が重視される社会において、「かわいいから」「懐かしくて落ち着くから」という理由だけでものを選ぶのは、最高の贅沢です。デスクの隅に小さなフィギュアを置く、スマホにシールを貼る。小さな「好き」という感情で、張り詰めた心に余白を作ってみませんか。

筆者は大阪大学のキャラクター、ワニ博士をデスクに置き、日々癒されています

2)デジタルを離れ、手触りに没頭する

SNSの通知から解放され、カプセルトイを組み立てたり、おもちゃの質感に触れたりする時間は、マインドフルネス(瞑想)に近い効果があります。お子さんと一緒に無邪気に遊ぶのも良いでしょう。五感を使うことで、脳を心地よくリフレッシュできます。

3)あの頃の自分に再会する

子どもの頃にハマった漫画やアニメを、あえて今見返してみてはいかがでしょうか。当時は気づかなかったメッセージに励まされたり、無垢な気持ちを思い出したりすることで「あともう少し頑張ろう」と心機一転できるかもしれません。

自分の持続可能性をあきらめないために

SDGsの根幹には、「未来の世代のニーズを損なうことなく、現代のニーズを満たす」という考え方があります。これを個人に当てはめると、「未来の自分が笑っていられるように、今の自分をケアする」といえるのではないでしょうか。趣味への没頭も、レトロな世界に浸ることも、決して現実逃避ではありません。それは、私たちが明日も健やかに生きていくための、前向きな自己投資といえます。

息抜きもかねて、たまには童心に帰ってみませんか。あなた自身の持続可能性を高めることは、回り回って社会、そして世界をより良く、より優しい場所へと変えていく力になります。

<参考>