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無印良品がつなげる地域や人々~「感じ良いくらしと社会」の実現を目指して~

なるほど!

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「感じ良いくらしと社会」の実現を目指し、無印良品を展開する株式会社良品計画。その取り組みはSDGsと重なる部分も大きく、創業以来サステイナブルなものづくりやサービスを続けています。ソーシャルグッド事業部の部長※2である生明 弘好氏に、株式会社良品計画の理念や社会課題解決を通じた事業についてお話を伺いました。

株式会社良品計画
ソーシャルグッド事業部 部長※2
生明 弘好

視点を変え、眠った価値に光を当てる

1960年~1970年代にかけて高度経済成長期を経た日本では、大量生産・大量消費を良しとする風潮がありました。そのような社会へのアンチテーゼとして、1980年「無印良品」が誕生。「わけあって、安い。」をキャッチコピーに、今まで価値を見出されてこなかった存在に光を当てる商品の企画から始まったのです。例えば、「しゃけは全身しゃけなんだ。」というコピーが注目を集めた鮭の缶詰は、見た目の良い胴体部分だけでなく、頭やしっぽまで全身を缶詰に使っています。それまで使われてこなかった資源を有効活用するとともに、ものづくりの無駄を省き、手が届きやすい価格を実現しました。このように、無印良品では素材の選択、工程の点検、包装の簡略化という3点を心掛け、環境・社会に配慮しています。視点を変えて未利用資源が持つ潜在的な価値を見出し、サステイナブルな生産と消費に取り組むという考え方は、創業当時から現在まで引き継がれています。

地域社会の中で、当初の役目を終えて使われなくなった公共空間も眠った資源ととらえることができます。良品計画では、廃校となった旧老川小学校(千葉県大多喜町)にコワーキングスペースを開設したり、旧長尾幼稚園・小学校(千葉県南房総市)の校庭で菜園付き小屋を販売したりと、施設や場所を有効活用しています。地域住民の新たなコミュニティを生み出し、地域全体を活性化させることが狙いです。

また、農水産物や空間だけでなく、多様な人材にも光を当ててしかるべきでしょう。障がい者や子育て中の方、高齢者などを含めた、あらゆる人々が社会に参画できる環境を作り、誰一人取り残さない社会の実現に貢献していきます。

2017年11月に開設した、旧老川小学校のコワーキングスペース

地域を巻き込み、巻き込まれる

私たちは無印良品の店舗を通して、地域活性化を目指す取り組みも行っています。例えば、多くの人々が生活する団地「光が丘パークタウン」(東京都板橋区)の中の「MUJIcom 光が丘ゆりの木商店街」には、売り場だけでなくシェアキッチンや小上がりスペースがあり、地域の人々の交流を育んでいます。一般的な店舗と比べて食品類を充実させるなど、団地という立地を生かして生活の基盤を支える一面も。また、東日本大震災で大きな影響を受けた福島県双葉郡浪江町の店舗「無印良品 道の駅なみえ」では、農林水産業の振興や帰還する人々の住環境の整備を行っています。

地域とつながる中で念頭に置いているのは、主役は私たちではなく、あくまでも地域の人々だということ。店舗を交流のプラットフォームとして、地域活性化に意欲的な人々をつなげる役割を担います。私たちが原動力となって、地域に巻き込まれる形で経済循環を生み出し、今後も活性化を進めていきます。少子高齢化や過疎化により疲弊する地方の持続可能性を高めることは、日本経済や市場の活性化につながり、ひいては当社の持続可能性にもつながるでしょう。

また、私自身は海外勤務を経て、地域(ローカル)を大切にする視点が必要だと気付きました。グローバルとローカルは二律背反するものではありません。外国でも都会でも、そこに住む人々のローカルなくらしが存在します。くらしやすい持続可能な地域を実現するため、無印良品の店舗は地域の人々にとって役立つ存在になることを目指します。

「MUJIcom 光が丘ゆりの木商店街」のシェアスペース

余白から生まれるサステイナビリティ

無印良品の商品が媒介となり、今まで一歩引いていた人々がSDGsに参画する契機も生まれます。なぜなら、無印良品は「余白」を意識してものづくりを行っているからです。「余白」とは、自由に使い方を工夫できる余地を残すこと。そうすることで、自然とサステイナブルな使い方をしたり、新たな社会価値を生み出したりできるでしょう。例えば、「その次があるタオル」※1は、タオルとしての使用はもちろん、ガイドラインに沿って切ることでほつれず雑巾や台ふきとして再利用できます。あえてベッドと名付けていない「脚付マットレス」は、ライフスタイルが変化しベッドとして使わなくなっても、ソファに転用するなどさまざまな用途で使い続けていただけます。SDGsやエコといった言葉は使っていませんが、無印良品の商品を選ぶことで自然と環境や地球に配慮した行動につながります。 良品計画が目指すのは、「感じ良いくらし」とその先にある「感じ良い社会」です。「感じ良い」とは、一人ひとりのくらしが大切にされており、自分自身がくらしを大切にできること。地球に生きる一人ひとりのくらしを大切にすることは、SDGsにつながるのではないでしょうか。全ての人々が「感じ良いくらし」を実現できるよう、これからも良品計画は商いを通じて新しい価値の創造をすることで、社会へ貢献していきます。

リビングでソファのようにも使える「脚付マットレス」

※1「その次があるタオル」は店舗により在庫状況が異なります。  ※2 役職はインタビュー時点のものを記載しております。

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