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サステイナブルに「整う」ために。町と人の持続可能性を高める銭湯のあり方とは。―後編:銭湯による町おこしがブームに?―

空前のサウナブームにあり、再注目されている銭湯。実は、心身の健康に良いだけでなく、その成立過程からSDGsと強い結びつきを持っています。 本記事は、サステイナブルな観点から銭湯を再定義することをテーマにした、前後編のシリーズです。銭湯の歴史と、人に寄り添う銭湯の姿をフィーチャーした前編に続き、後編では、銭湯を通じた地域・経済活性化について紹介します。地域や街とともに変化し、発展してきた銭湯。地域と一体となった活動も数多く存在し、中にはGOAL8「働きがいも経済成長も」やGOAL11「住み続けられるまちづくりを」に当たるものも。銭湯に関するさまざまな取り組みを見ていきましょう。

サステイナブロ-町を支える編-

❶銭湯で町おこし?

高温多湿な日本の気候風土の中で多くの人々に入浴の機会を提供し、地域の保健衛生水準の維持向上に大いに役立ってきた銭湯。地域のふれあいの場としても重要な役割を担い、独自の生活文化を築いてきました。

銭湯文化を守るとともに、地域住民の保健・衛生環境の向上や、高齢社会における福祉入浴援助事業等の推進に積極的に貢献している銭湯の全国団体があります。その名は「全国公衆浴場業生活衛生同業組合」(全浴連)。所属する39都道府県それぞれに組合が存在し、中には地域活性化をはかったり、行政と連携した活動を行っているところも。あなたの住む町にも、銭湯に関連した取り組みがあるかもしれません。

東京都は、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合と連携して都内400か所以上の対象銭湯に無料で入浴できる「東京1010(セント―)クーポン」のプレゼントキャンペーンを行っています。オリパラ1周年記念イベントなどの来場者のほか、「東京都公式LINE」を友だち追加した人や、対象施設への来館者にもクーポンを配布。実施当初の2022年7月から人気を博していたこのキャンペーンは、熱い要望を受け、現在第4弾まで開催されています。

利用者は日々の疲れを癒すことができ、地域活性化にも貢献できる。銭湯になじみのない方が利用するきっかけを作る素敵な取り組みで、ぜひ全国に広がってほしいものですね(※クーポンの利用予定数に達した場合は、有効期限にかかわらず利用不可)。

また、大分県豊後大野市では、「サウナのまち」宣言のもとで地域活性化を進めています。温泉の源泉数・湧出量ともに日本一で「おんせん県」を掲げる大分県にありながら、豊後大野市では温泉が出ません。地元のサウナ事業者がそれを逆手にとり、「あえてサウナ」というキャッチコピーを作成し、観光を盛り上げようと一念発起しました。

2021年7月18日、事業者たちの想いに応える形で、豊後大野市は「サウナのまち」を宣言し、サウナを活用した地方創生や町おこしに取り組むことを発表。「おんせん県いいサウナ研究所」を立ち上げ、大自然を生かしたアウトドア・サウナを支援するとともに観光資源として活用しています。今後も地域と連携して自然と共生した持続可能なまちづくりに取り組む予定です。

都会を離れ、大自然の中で「整う」と、リフレッシュ効果も高まりそう。大分にゆかりのない方も、サウナ目当てで訪れてみてはいかがでしょうか。

おんせん県いいサウナ研究所/あえてサウナ。告知ポスター

❷銭湯グッズでいつでも“サ活”

町の銭湯の中には、銭湯になじみのない人を取り込むために、さまざまな商品を発売しているところも。すぐ乾き、持ち運びしやすいタオルやお風呂グッズを持ち運べるスパバッグ、のぼせや髪の痛みを防ぐ効果があり、サウナ愛好家の間で人気が高まっているサウナハットなど、各銭湯が趣向を凝らしてグッズを制作しています。

こうした銭湯グッズは若者を中心に人気を博しており、百貨店などで企画展が組まれることも。阪神百貨店本店(大阪市)では2022年7月、「湯上りビールフェス」が開催され、銭湯とクラフトビールという二大ムーブメントが期間限定でコラボレーション。さまざまな商品が販売され、会場は多くの来場者でにぎわいました。

昭和レトロをベースに、少しエッジの効いたデザインが特徴的な「都湯」オリジナルグッズ

サステイナブロ-地球に優しく編-

さらに銭湯には、環境面でのメリットも。大勢で一つの銭湯に入浴することで、家庭での入浴に使用されるエネルギー、排出される二酸化炭素が削減されることを考えると、銭湯は地球温暖化防止策のひとつといえます。

例えば、湯船のお湯を常にきれいにするろ過機や温水器・排水の熱の再利用のほか、お風呂を沸かす際、水面に保温シートを被せて、熱を空気中に逃がさない工夫をしている銭湯も。これらはGOAL13「気候変動に具体的な対策を」やGOAL14「海の豊かさを守ろう」につながる活動です。

さらに、再生可能エネルギーを活用した銭湯も存在します。長野市保科温泉・若穂いこいの家では、お湯を温める際に木質バイオマスボイラーを利用。ボイラーの燃料は、間伐材などを圧縮成型した小粒の木質ペレットです。原材料である木が、その成長過程で光合成により大気中の二酸化炭素を吸収している点においてカーボンニュートラルだといえ、GOAL13「気候変動に具体的な対策を」に関連しています。

※木質ペレットイメージ

木質ペレットは木を製材する時に出るおがくずを固めて作っており、環境に優しい燃料です。保科温泉で使用しているものは、長野森林組合から調達した県産材カラマツを100%使用。木材の地産地消にもつながり、GOAL15「陸の豊かさも守ろう」にも関連する取り組みです。環境にやさしいお風呂を選んで入浴することで、SDGsへ貢献してみませんか。

いま、私たちにできることは

銭湯は時を超えて地域とともに発展し、人々の健康を支えてきました。私たちの先祖もきっとお世話になったであろう銭湯は、これからも形を変えながら発展していくことでしょう。まずは銭湯を知り、体験してみてはどうでしょうか。

自分自身が賛同できる取り組みを行っているところを探してみるのもいいですし、あなたの身近にある銭湯を訪れることで、新たな発見があるかもしれません。入浴によって心身の健康を得られることに加え、経済面や環境面でもSDGsに貢献できる。お風呂でゆったりくつろぎながら、地球の持続可能性について考えてみてはいかがでしょうか。

<参考>