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IT企業からDX企業へ 「変革」の体質化を目指し 持続可能なDXサイクルを創出  富士通株式会社

CEO(最高経営責任者)自らが先陣を切って、 全面的な社内改革を進める富士通のDXプロジェクトとは。

日本型DXの立を目指し海外拠点含む3万人参加の プロジェクトを発足

富士通は2020年、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」を社会における存在意義(パーパス)と定めました。我々を取り巻くIT市場は現在、データ活用ビジネスをはじめとする新たな事業への広がりを見せており、揚げたパーパスを実現するためには、 IT企業からDX企業への進化が不可欠。DX企業の先駆けとなり「日本型DXフレームワーク」を社会に還元することがパーパスの1つであると考え、立ち上げたのが全社DXプロジェクト「フジトラ」です。

フジトラで目指すのは、単に業務をデジタル化することではなく、海外効点も含めた13万人の社員一人ひとりが進化を続けるという体質を持つこと。「全員参加型DX」をフレームワークの1つに定め、全員がプロジェクトの一員であると自覚してもらうための工夫を行っています。まず、議論の場として社内SNSを活用。役員などが率先して社内SNSを使用することで、気軽に利用してよいと認識してもらい、発言しやすい場所に。また会社の制度や取り組みに対する社員の声を集めてフィードバックする「VOICEプログラム」を推進。社内アンケートで募った意見を施策に反映しています。こうして一人ひとりの参加意識を高めた結果、当初は20%ほどだった社内SNSの利用率も、現在は70%超にまでアップ。社員の声を反映したDXプロジェクトは150件ほど進行しています。小さな意見でも役員まで届く環境がモチベーション向上にもつながったのだと思います。

また「FUJITRA Festival」は3カ月に1度の定期開催で、職制も役職も関係なく、社員が会社のあるべき姿について自由に質問・意見・議論し方向性を決めていく、全員参加型のオンラインイベントです。実はこの催しも社員の声から始まったもの。 参加者も徐々に増えて現在は約7000人に上り、「全員参加型DX」の体質化を少しずつ感じています。

意思を尊重することで、 生まれるエネルギー

フジトラ以前より富士通が大切にしているものの1つに「デザイン思考」があります。現在社会に求められているのは、高度な製品や優れた技術をただ発信することではなく、お客様の立場に立って考え本当に求められているものをデザインすること。この思考をベースにフジトラの一環として定めたのが変革に向かうためのオンボーディングプログラム「exPracticeプログラム」です。大きな企業であればあるほど、個人の思いよりも組織としての決定が尊重され、「声を上げてもどうせ変わらない」という意識を持たれてしまうことが多いのではないでしょうか。プログラムで最初に行う「Purpose Carving」では、自分自身のパーパスを言語化し、自らの使命や成し遂げたいことを確認します。 個人の意思にスボットを当てることで、心に火がつき、エネルギーが生まれると考えているからです。一人ひとりの持ち味を生かして相手の立場に立って「最高のエクスペリエンス」を目指すことが、よりより環境をデザインする「変革」への近道ではないでしょうか。DXという前例のない取り組みは当然必勝方法などなく、最初は何もかもが手探りでした。成功も失敗もすべてが学びとなっており、開始時に定めた9つのDXプロジェクト・ステートメントの中にある「ともかくやってみよう」の精神の重要さを再認識。絶え間なく進化を続ける昨今の社会では、チャレンジする気持ちを忘れずにいることが大事だと感じます。つまづいたときは、パーパスに立ち返ること。どういう社会や未来を描くかを再確認しながら、今後も邁進していきます。

<Profile>

原 博樹 HARA Hiroki

富士通株式会社 CEO室

CDXO Division Division長

2000年入社。社会インフラ担当。営業を経て、2020年7月より全社DXプロジェクトに従事。

掲載紙

今回のインタビューは、東洋経済新報社と株式会社WAVEが制作した「東洋経済ACADEMIC 次代の教育・研究モデル特集 Vol.1」に掲載されています。


東洋経済ACADEMIC 次代の教育・研究モデル特集 Vol.1
未来社会を担うDX・AI その真価を解き明かす

東洋経済ACADEMICシリーズから【DX・AI】に関する書籍が発刊。
Sociaty5.0で示される日本社会の未来を実現するために、社会課題解決に資する人材育成、研究が現在ほど求められている時代はない。今日、ウィズコロナ時代に向けて、DX推進・AI活用は、産業界のみならず、教育界の先進分野として世界の注目を集めている。文部科学省をはじめとする各省庁の動きからも、データサイエンス教育やデジタルとフィジカル融合型の研究手法への支援は力強く展開中である。本誌では、教育・研究の場におけるDX推進・AI活用を実現する多様な事例を紹介し、それらを加速・推進する次世代教育・研究モデルの核心に迫る。